芽生え2 〜コンプレックス〜 2
「イタイッ…痛いってっ!放せよラビッッ!!」

 大地はラビに無言で耳を引っ張られ、悲鳴を上げる。

 木々の茂みに入ると、ラビはやっと大地を解放した。

「もぅっ!!何だってんだよっ!!」

 真っ赤になった耳を押さえて、大地は猛抗議する。

「お前、今ガスに何聞こうとしてた?」

「っっ…!!」

 思ったより静かなラビの口調に驚きつつも、大地はぐっと喉を詰まらせる。

「ほら、何聞こうとしたか聞いてんだ。『チ』の後だよ、『チ』の後ォ!!」

 ラビは自分が大地に謝りにきたことなどすっかり忘れて、今度はものすごい剣幕で大地に詰め寄った。

「……」

 答えようとしない大地に、ラビは痺れを切らして問い詰めた。

「お前、ガスにチンチンのこと聞こうとしてたんだろ!?」

 図星を指されて、大地はカーッと頬を真っ赤に染める。

「…そんなこと、ラビには関係ないじゃないか」

 あの内容を盗み聞きされていた恥ずかしさも手伝って、大地は赤くなった顔をツン、と背ける。

「関係なら大いにあるねっ。水浴びの時オレがあんなこと言ったから、他のヤツのソッチはどうなってんだろーとか思ったんだろ?

…ガスまで巻き込んで、はっ、やっぱガキのすることは程度が低いね」

 ラビは気づいていないが、ラビがここまで言うのはガスに対する嫉妬心があるからだ。なぜだかあんな話を大地がガスにする…というのが許せなくて、

こんな風にしか言えないのだが。

 そんなラビの気も知らず、また『ガキ』と言われた上に『程度が低い』なんて言われて、大地はかなりムッときた。

「ガキッて言うなって言っただろ!オレ、湖でラビにバカにされて、すごく落ち込んだんだからな!」

 ラビはそれを聞いて、大地に謝りにきたことをいまさら思い出した。

「あっ…それは…」

 ハッとして言葉を続けようとするラビに、大地は膨れながらではあるが思いを吐露した。

「オレ、あれから1人で色々考えたんだ…白いの出ない原因。こないだラビと触りあいっこした時に、ラビの方がオレのより大きいし、

その…先っぽもちょっと違ってたから、それかな…とか」

 ラビはあの夜そんなこと思いもしなかったのだが、その後の湖でのケンカからこっち、大地は性器の大きさと発育の違いに大いに悩んでいたらしい。

 大地はうつむき加減で恥ずかしそうに続ける。

「あの時教えられたみたいに1人でしても、水みたいなのしか出なくって…ラビにそんなこと言ったらまたバカにされそうで、

同じ年のガスはどうなのかなって思って聞いてただけだよっ」

 コソコソとどこかに行って暗い顔で戻ってきていた大地。きっと1人で試してみたものの射精できず、ラビに『ガキ』なんてバカにされたように子供な自分を思い知らされて、

落ち込んで帰ってきていたんだろう。

 そしてコンプレックスを抱いている相手、その上自分にあんな言い方をするラビに、おいそれと相談できないという大地の気持ちは痛いほど分かった。



「…オレ、水浴びん時はお前にひどいこと言ったな。わ…悪かったよ。ごめん」

 ラビは素直に謝った。自分が言った一言で、そしてなかなか謝れなかったことで大地をここまで悩ませてしまい、本当に悪いと思ったのだ。

 大地はそれを聞いて、驚いた。あの、天邪鬼で素直じゃなくて、人に謝るなんて知らなさそうなあのラビが、自分にごめんというなんて。

「だ…大丈夫?ラビ」

「な、何だよっ!オレだって悪いと思えば謝るよっ!」

 思わず心配になってしまった大地は、真っ赤になるラビを見て、クスッと笑った。

 ラビの性格からすると、「ごめん」の一言を言うのにも勇気がいっただろうと思う。それを乗り越えて自分に詫びてくれたことがうれしくて、大地はラビを許した。

「うん、もういいよ」

 ラビは照れくさいのか向こうを向いてしまっている。

「あれー?ラビくん、ウサギ耳が真っ赤だぞー?恥ずかしいのかなー??」

「っ…!」

 大地は、そんなラビが可愛くて顔を覗き込んだ。

「うるさいっ!くそっ、これだから人に謝るのは苦手なんだ!」

 ラビはそれこそ顔から火を噴きそうなぐらい頬が真っ赤だった。

 大地はひひひ…と肩をすくめて笑って、伸びをしながら明るく言った。

「あーあ、オレいつ出るのかな、白いの」

 大地は何気なく言ったのだが、それを聞いてラビはからかわれた復讐とばかり、いかにも含蓄を含んだ様子で答えた。

「う〜ん、それはオレにも分からねぇけど、こういう話聞いたことがあるぞ。ニンジン嫌いの男は、アレの育ちが悪いって話」

「っ…。またオレだまそうとそんな嘘…!」

 大地はこの間、『マザコン病』とだまされそうになったことを思い出し、すぐに嘘だと見破った。だが今日のラビはすぐにはばらさない。先ほどの反省はどこにいったのか。

「いや、これが本当なんだって!ニンジンを良く食べるヤツはサイズもでかいらしいぞ」

「…そんなの、聞いたことないよ」

 半信半疑でジトーッと見つめてくる大地に、ラビはさらに追い討ちをかける。

「まぁオレは普通にニンジン食ってるからコレだけど、ガスのチンチン見たことあるか?あいつのすげーぞ」

 大地はムシャムシャとニンジンをほおばるガスを思い出す。確かに毎日、生で何本ものニンジンを食べている。

「そんなしっかりは見たことないけど…そうなの?」

(いとも簡単に引っかかってくれちゃって…!これだから大地をいじめるのはやめられないな)

 水浴びでのケンカ以来大地をからかうことが久々で、妙に楽しくて仕方ない。ラビは内心笑いが止まらなかった。

「ああ、今度着替える時とか水浴びの時に見てみろって。もう大人顔負けなんだぜ?ああ、さっきお前がもしもガスに見せてもらってたら、ショック死するとこだったろーよっ」

「…そんなに…」

 ガスのペニスを想像し、1人青くなる大地。大嫌いなニンジンを性器の発育のために食べなければいけないと知って、大地は肩を落胆させた。

 その様子にラビはもう、笑いをこらえきれなくなって豪快に吹きだした。

「ぷっ…あははっ!嘘だよ、大嘘!!」

「!!!」

 大地はまたもラビにバカにされたと思い、ワナワナと肩を震わせた。

「おっもしれぇな〜、見事に信じてくれちゃってっ!!」

 心底楽しそうに笑うラビを見て、大地はくやしくて怒り心頭だった。

「ひっ…人が真剣に悩んでんのに…ラビのバカ!!」

 屈辱のあまり、ふーふーと息を荒げて大地はその場を去ろうとする。

 仲直りしたばかりだというのにまた新たなケンカの様相を呈してきたため、ラビは大地の腕をつかんだ。

「はっ…放せよっ!!」

 抗ってその手を振り解こうとした大地に、ラビはにんまり笑った。

「まぁまぁ、お悩み相談が途中になってるぜ。オレのチンチンとお前のチンチン、どう違うって?」

「…もうラビになんか相談したくないよっ。どうせまたオレバカにして遊ぼうとしてるだけなんだろ!」

 さっきの件で、大地のラビに対する信用度は限りなくゼロに近い。まあ無理もない話である。

「ふーん…残念だな〜。せっかくお前の悩み、解消してやろうと思ったのに」

「そっ、そんなこと言ったって、信じられるもんかっ」

 ラビに対しての不信感は、そう簡単には拭えない。大地が一歩足を踏み出そうとすると、ラビはその前に立ちはだかり、真顔で言った。

「からかったことは悪かったよ。それにさっきも謝ったみたいに、傷つけたこともホントに悪いと思ってるんだ」

「……」

 間近で見つめられて、大地はドキン、と鼓動が強くなる。

「…じゃあなんで今みたいなこと言うんだよ」

「あれは、おもしろいからつい…」

「なんだそれっ」

 呆れてまたその場を動こうとする大地。だがラビは不敵な笑いを浮かべた。

「こないだの夜言っただろ、『白いの出るまで面倒見る』って。お前のチンチンがオレとどう違うのか見てやるから」

 大地は立ち止まってしばらく考えた。

 なんだかんだと言ったって、ラビは前回困っている自分に色々と教えてくれた。あの時ラビがいなければ、どうしていいか分からずに途方に暮れていただろう。

「…も、もう、嘘ついてからかったりしない?」

「ああ、しねぇ。約束する。オレを信用しろ」

 妙な自信をたたえるラビに、大地は複雑な表情を浮かべながらも、こくん…とうなずいた。



 大きな木の幹に大地をもたれさせ、ラビは大地のペニスをズボンの上からやんわりと触れた。

「ふっ…」

 大地は思わず身を硬くする。自分の手の中で、その部分がだんだん大きくなってきたことを感じながら、ラビはベルトをはずしてズボンからそれを露出させた。

 ラビはひざまづいて大地のペニスを見る。

 先ほど吐露した悩みの原因を改めて凝視されて、大地は恥ずかしくてぎゅっと目をつぶっている。

「…ちょっと皮かぶってるだけじゃねーか。心配ないよ」

「あっ…つつくなよっ」

 ラビの言葉にほっとしつつ、興味津々で見つめられて大地はこれ以上ないというくらい顔を赤らめていた。

 ラビは大地のペニスをきゅっ…とつかむ。

「ぁぅんっ」

 大地の腰がビクリと震える。ラビはそっとペニスの先端にある皮を、下に下ろした。

「イッ…痛っ!」

 ビリっ!という感覚と共に、強い痛みが大地を襲う。

 思わず腰を引っ込めようとしたが、ラビは真剣な顔でそれを続行した。

 ひんやりと新しい空気がそこに触れるのが分かる。でも何より、大地は痛くて痛くてたまらなかった。

「痛いっ…痛いよラビっ!」

「我慢しろ。男だろ、お前」

「そっ、そんなこと言ったってぇー…」

 情けない顔で半べその大地に、ラビはため息をついた。

「ったく、しゃーねーなぁ。サービスだぞ」

 そう言ってラビは戸惑うことなく、大地のペニスを口にふくんだ。

「っあっ!!」

 大地は身体を大きくビクリと揺らせた。ラビのおかげで新たに露出された敏感な部分が、ぬめぬめとした感覚でいっぱいに包まれる。

「ふぁっ…あ、ぁんっ!」

 脚がガクガクと大きく震え、大地は立っているのがやっとという感じだ。

 その声や様子から、大地が痛みから解放され充分に感じているのが分かる。

 自分の愛撫によってあられもない声を上げている大地のことが、なぜだかラビには無性に愛しく感じられた。

 いったん大地自身から口を離し、顔を上げる。

 その視線に気づいた大地は全身を大きな快感に包まれて、うるんだ瞳でラビの名を呼んだ。

「…ラビィ…」

 それに誘われるようにラビはゆっくりと立ち上がり、木にもたれている大地にそっと顔を近づける。

 そしてこの間と同じように、口唇を重ね合わせた。

「っんっ…ラ…ビっ…」

「大地…」

 熱い吐息の中で、互いの声と舌がもつれ合う。ラビは大地のペニスに手を伸ばし、優しくさすった。

「んっ、は…」

 押し寄せる快楽の波に耐えるように瞳を閉じて、大地が息を喘がせる。

 ラビは不思議だった。なぜ自分は大地にこんなことをしているのか。

 あの夜、性器の様子がヘンだと涙目で訴えられてから、大地のことが気になって仕方ない自分がいる。

 湖でのケンカだって、元はといえばあの夜が原因だった。あの夜があったから、大地の裸に見とれてしまい妙な言い争いになった。

 放っておけばよかったのに。避けられても、ガスに何やら相談していても、放っておけばよかったのに。

(自分のペースに持っていってるつもりでも、実は大地に振り回されてんのかもな、オレ。ホントどうかしてるぜ)

 キスをしながら、しびれる頭でそんなことを思っていると、大地が突然震える手で、ラビの股間に触れてきた。

「っ!!」

 ラビはハッとして、大地の口唇から離れる。

「んっ、ふぅ…ラビのも、大きくなってるね…」

 大地は熱に浮かされたような表情で、息も絶え絶え優しくそこをさすり上げる。

「オ、オレも…ラビの、したい…」

 それを聞いて、ラビの中で何かがはじけた。

 これだ。大地のこの表情が、自分の理性を粉々にするんだ。前もそう。この顔を見ると、後先考えずに大地に取り込まれてもイイや、という気にさせられる。

(大地にこんな風にお願いされて、断るバカがいるかってんだ!)

 もはやラビに躊躇はなかった。じれったそうにズボンから自身を出して、大地に擦り寄る。

 大地はあらわになったラビのペニスを、そっと愛撫した。

「っぅんんっ…だ、だいち…っ」

 ラビは大地の耳元に顔を埋めて、その感覚を味わう。ラビの吐息をくすぐったく感じながら、大地はその背中に腕を回した。

「んくっ…あっ…」

「はぁっ、んっ…あんっ!」

 2人のペニスから透明な雫がにじみ出て、小さな音を立てている。

 互いの快楽が手のひらから、そして指から伝わってきて、愛撫がより激しくなった。

「ひぁっ!ラビっ…も、もうオレっ…」

「っ…オレもっ…!!」

 ぶるっ…と身体を震わせて、2人は絶頂を予感する。

「んっ…あぁんっ!!」

 一足早く大地が大きな声を上げ、達した。

 その瞬間、大地のペニスの先端からピュクッ…と精液がほとばしった。

「あっ!」

 ラビはそれに気づいて思わず声を上げたが、イッた余韻でビクビクと身体を震わせる大地を見て、たまらずそれに続いた。

「んんっ…!!」

 ついにラビも、高みへと昇りつめた。



 ラビと大地はゆっくりと木の根元に崩れ落ち、しばらくの間身体を密着させて、熱が引くのを待った。

 ハァハァと肩で息をしながら、ラビは自分の衣服をつまんで、そこについた大地の精液を示した。

「お前、白いの出たじゃん」

 なんだかラビは嬉しそうだ。大地は絶頂の時、強烈な解放感があったので、それに気づいていた。

「うん、出た…」

 ボーっとした様子でうなづいてから、ラビを見る。フフッと肩をすくませて笑うラビにじわじわと喜びが湧いてきた大地は、ラビに抱きついた。

「うわ、何だよっ!」

「ありがと、ラビっ!!」

 大地は悩みから解き放たれて、心底嬉しそうだ。

「オレ、ホントにずっと悩んでたから…ラビのおかげだよ。ありがとな!」

 そう無邪気に笑って、ラビにじゃれついてくる。ここのところ浮かない顔してたのが嘘のような、晴れ晴れとした表情だ。

 ラビは悩ませていたのは自分なのに…と胸が痛くなった。だが大地はそんなこと気にもしてない様子ではしゃいでいる。

 きゅん…とする胸を押さえながら、大地の瞳をじっと見つめた。

 今まで見たことのない、ラビの優しげな表情に気づいた大地はふと我に返り、その目を見つめ返す。

 そのままラビは、引き寄せられるようにゆっくりと大地に近づき、柔らかなその口唇にそっと口づけた。

 瞳を閉じて、それを静かに迎え入れる大地。ラビはこのキスが、自分たちにとってとても自然なことのように思えた。

 軽く大地の口唇を愛撫して身を離したラビに、大地は真っ赤な顔で質問した。

「ラビ…これって、キ…キスだよね?」

 改めて今の行為を口にされるとむちゃくちゃ恥ずかしかったラビだが、なんとか平静を装って答える。

「そっ…そうだけど?お子様なお前でも、それぐらいは知ってたらしいな」

 内心心臓バクバクに焦りながらも、余裕を見せたいラビ。チラ、と大地の顔を見てみる。

 大地は少々バカにされたと思い、ムッとした様子で言った。

「いくらオレでも、キスぐらいは知ってるよっ。…でも…」

 そして口唇に指を当て、不思議そうに呟いた。

「キスって、好きな人同士がするんでしょ?この間も思ったけど、ラビはなんでオレに…」

(こっ…こいつ、なんちゅうこと聞くんだっ!!)

 大地に聞かれたことは、実のところラビにだって良く分からない。ただ目の前にいる大地が可愛くて、キスしたいと思ったからキスした。ただそれだけ。

 なんで、なんて聞かれてもうまく言葉にできないし、たとえ言葉にできたとしても、それを口にするほどラビは無邪気ではなかった。

「わっ、分かんねーよっ。そういうお前はどうなんだっ」

 答えられず、思わず大地に質問を返す。だがそれは、ラビが一番気がかりで、大地に聞いてみたいことだった。

 前も今回も、ラビがキスをすると大地は何も言わず受け入れた。拒否されたことなど一度もない。

 それどころかキス以上の関係になってしまったのだが、大地はそれをどんな風に捉えているのだろう。

 大地はう〜ん、と少し考え込んで、ラビを見つめて言った。

「オレは…オレも良くわかんないけど、ケンカしても結局はラビのこと好きだから、イヤじゃなかったよ。キスするのも、その…あんなことするのも」

 そして恥ずかしそうに頭をかいて笑う。ラビは鼓動が一気にドクンッ!と跳ね上がるのを感じた。



(大地…オレのこと、すすすす好きって…!!!)

 大地は天然なところがあって、周りを動揺させるようなことでも、思ったことを素直に口にする。それが慎重なラビとは大きく違うところであり、またラビが大地をうらやましく思うところであった。

 今の大地の言葉は本当に言葉通りで、ラビのことを『好き』だというのにも深い意味はないのだろう。

 だがそれでもラビは、すごく嬉しかった。



 ドキドキと高鳴る心音を感じていたラビに、遠くからガスの声が聞こえてきた。

「大地くん、ラビくーーん!夕ごはんできましたよーーー!!」

「あ、ガスが呼んでる。行こっ、ラビ」

「あ、ああっ」

 2人は衣服を身に着け、ガス達の元へ向かった。



 夕食時、普段通りの明るく元気な大地に戻ったことを、V−メイたちはホッとしていた。

 怒ったラビが、大地を無理矢理連れ去っていくのを目の前で見ていたガスは、その後の仲直りがうまくいったと分かってことのほか嬉しそうであった。

 その夜、野営地で眠る一行の中で、ラビは1人物思いに耽っていた。

 大地の悩み、仲直り、今日の大地との行為、キス。そして好きだと言われたことで、ますます大地のことばかり考えるようになってしまっている。

(いやぁ、オレってカンッペキ大地に振り回されてるよな)

 ラビはそれを強く自覚する。大地の言動ひとつにドキドキして、焦って、喜んでいる自分。

 ラビの中で、そこまで大きな存在を占める人間が他にいただろうか。

 何気なく、あどけない顔で眠る大地の顔を覗き込む。

(でもコイツなら…コイツになら、振り回されんのも悪くねぇ)

 少々自分の顔が赤らむのを感じて、ラビはふ、と軽く笑う。

(あんなことするの、大地はイヤじゃないって言ってたな。…今日の続き、いつかさせてくれるかな)

 大胆にそう思うラビの鼓動は、再び早く高鳴り出した。

(あーダメだ、眠れなくなりそうだぜ!明日は食事当番だってのに…またガスに怒られるじゃねーかっ)

 大地の方を向くと、イヤでも今日のことやその続きを考えてしまう。でもそうかといって向こうを向いてもまた同じこと。

 ゴロゴロと落ち着かない動きで一晩明かしたラビは、案の定朝寝坊して、気の毒にもガスに叩き起こされたのであった…。



−END−



後書きという名の言い訳

   えへへ〜、芽生え第2弾。前回のお話を気に入ってくださる方が結構いらっしゃって、シリーズ化しちゃいました。

   またもやショタくさいねぇ(笑)ショタビバビバ!ショタ上等っ!!(開き直り)

   副題に『コンプレックス』とありますが、まぁコレぐらいの年の男の子なら、同年代の発育度合いはすごく気になるでしょうということで、

   ラビの思わずな一言から大地に悩んでもらいました。

   青いねぇ、若さだねぇ。(お前誰やねん)

   前回では身体の現象が第1で、気持ちなんて二の次という具合でしたが、今回は2人の気持ちが少し進展してます。

   ラビは勘がいいのでそこそこ自分の中に芽生える気持ちに気づいてますが、大地は鈍感なので、まだまだ前途多難だな〜ラビ。

   そしてもう1つのテーマとして、大きく『ケンカ』というのがあります。

   この2人のケンカ、大好きなんですよ。原作でも、ことあるごとに意地の張り合いとか小競り合いしてるしね。

   ここではそれこそくだらない言い合いから、可愛いもの、マジゲンカまでを取り入れてみました。

   それに、ガスやV−メイ、グリグリを書けてすごく楽しかったです。特にガス!!うぅん、動かしやすい!!

   はてさて、このお話…第3弾はどうなるんでしょうねぇ。

   ラビの「続きがしたい」という野望は叶えられるのか。どうなのか!!(ホンマにお前誰やねん)