「あ…すみません…」
小さく詫びると、中村から大地の着物を受け取った角刈りの男が言った。
「寒かったんだろうね、鳥肌が立ってる」
「じゃあ早くしないと風邪引いちゃうな。えーと、大地くん…だったっけ?そのままここ座って」
スキンヘッドの男はそう言いながら、自身の背後にある椅子を示した。
大男の陰に隠れて今まで気づかなかったが、その椅子は医療用の大きな診察椅子だった。
もしかしてこのチンピラみたいな男たちが、聴診器をつけて触診検査をするのだろうか。
どうにも想像がつかなかった。
言われた通りに、ひとまずふんどし一丁でその椅子に座った。
その途端、角刈りとスキンヘッドの男が大地の両脇にそれぞれ向かい、囲むように並んだ。
少しぎょっとしていると、スキンヘッドの男が笑いながら大地を覗き込んできた。
「倒すよー」
見えないところで診察椅子の操作ボタンを押したらしく、小さな電動音とともに背もたれが後ろにゆっくり倒れていく。
と同時に台の高さが少しずつ上昇し、大地が片脚ずつかけていた足置き部分も徐々に左右に広がり始める。
(え…?)
それによって自然に大きく開脚することになり、大地は戸惑った。
ふんどしを穿いているとはいえ、人前でこんな恰好をするなど初めてで恥ずかしかった。
「今から行う検査は、ここ中村屋に勤めてもらう上で一番大事な検査だからね」
大きく拡げられた大地の脚の間に、ぬっと現れた中村が薄く笑った。
そして大地の右隣にいる角刈りの男に視線を送る。
角刈りの男は軽くうなずいて大地のふんどしに手を伸ばし、手慣れた様子で瞬時にほどいてその身体から取り去った。
「……!!!」
大地は羞恥心で真っ赤になった。
これではペニスやお尻など、恥ずかしい部分が丸見えではないか。
「っ…」
とっさに身を起こし、続いて脚を閉じようとしたら、左右から男たちがそれを遮った。
「はいはい、恥ずかしいのはわかるけどおとなしくしてようね〜」
「隠されたら検査できないからね〜」
太ももや腕を痛いほど押さえつけられて、たちまち元の体勢に戻された。
彼らの口調は優しくあやすようではあるものの、筋肉のついた丸太のような太い腕で大地の脚と上半身を椅子に縫いつけるその力には、
まるで容赦がなかった。
中村は開かれた大地の脚の間に中腰になって、ペニスを凝視した。
「発毛はまだまだだな」
何を納得しているのか、ふんふんと小さくうなずいている。
「皮かぶってて、まだまだ可愛いですねェ」
スキンヘッドの男も、大地を押さえながらそこを覗き込んで笑っている。
(オレ、ウェイターの仕事なんだろ?それなのになんでこんなとこ…からかわれて遊ばれてんのか?)
大地は疑問と羞恥で頭が混乱し始めていた。
ふと、中村の手元が明るくなった。
その手には灯りのついたペンライトが握られている。
「さァ、お次は肝心かなめのこの部分を見ていくよ」
中村は大地のお尻の穴にライトの光を当てた。
そして身体を前のめりにし、ペニスを見るよりも熱心に食い入るような眼差しでそこを見つめた。
「おぉ…こりゃあ綺麗なピンクだな…」
高揚しているのか、声がわずかに震えている。
「どれどれ?」
大地の両脇にいる男どもは、照らされた幼い菊門を見ようと嬉々として首を伸ばした。
中村は彼らによく見えるように、ライトを持っていない手の親指と人差し指を大地の菊門の左右に添えて、そっと開いた。
「ぁっ…!」
大地はいきなりそんなところを他人に触られて声を上げた。
驚いた拍子にがくん、と身体が大きく震えたが、両脇の男たちは菊門を覗き見ながらもしっかりと押さえることは忘れておらず、
大地の動揺を気にもとめていなかった。
「ほんとですね、小さくってツヤのある薄桃色だ…可憐って表現するのがふさわしいですね」
「なんてピュアな菊門…!」
角刈りの男もスキンヘッドの男も、夢中になってそこを見ている。
こんなところを何人もにじっと見られるなんて。
大地はもう羞恥が最高潮に達し、自然と涙ぐんでしまった。
中村はライトに照らされる大地の菊門から目を離さずに尋ねてきた。
「大地くん、ここ…お尻の穴だけどね、今まで誰かに触られたり、何かを挿れられたりしたことはあるかい?」
中村は何を言っているのだろうか。
こんなところにそんな妙なことをする話なんて聞いたことがない。
質問の意図がわからないもののそのような行為が普通ではない気がして、大地は首を大きく横に振って否定した。
その様子を見て、中村はクク、と笑った。
「まったくの未経験か。まァここをひと目見ればわかったが、一応確認のためにね」
確認って?どういうことだろう。
大地は勇気を振り絞って質問した。
「あの…これってどういうことが目的の検査なんですか…?ここで勤めることとどう関係があるんですか?」
大地の口調には、理由も教えずに恥辱を与えてくる中村をやや非難する色が含まれていた。
中村はそれに気づきながら、かわすように笑う。
「それはまた検査の後に説明するよ」
答えを先延ばしにされ、大地は腑に落ちず再度尋ねた。
「オレの仕事、ウェイターですよね?」
「おい、ローションと手袋取ってくれ」
中村は大地の質問を無視し、角刈りの男に命じた。そしてずっと部屋の入り口にいたシャマンを呼び寄せた。
「シャマン、ライトを持っておいてくれ」
「……」
シャマンは無表情ながらも、中村の傍に来てペンライトを受け取った。
その光の先は大地の菊門を照らしている。
「っっ……」
大地は中村から充分な答えが得られず、不満を抱いた。
また、こんな恰好をシャマンに間近で見られることにも、さらなる羞恥が重なりたまらなかった。
中村は医療用の薄いビニール手袋をはめて、ローションを掌に垂らした。
そしてそれを指ですくいとってまぶしながら、大地の菊門の入り口に塗布した。
「ひゃっ…?」
いきなりお尻の穴に冷たくてとろりとしたものをつけられたので、大地は肩をすくめた。
中村は中指でくすぐるように、入り口のシワに丁寧に塗りつける。
ずちゅ、くちゅ、という粘り気のある水っぽい音が響いた。
「…っあっ…」
大地はむずむずするような感覚に襲われて、思わず声を上げた。
くすぐったくて、妙な気持ちになる。
さっきからなんでずっとここを見たり、触ったりするんだろう。
これが仕事となんの関係があると言うのだろう。
甚だ疑問だったが、ものがあまり考えられないほど大地は翻弄されていた。
「よし、じゃあいくよ…」
中村は小さく呟いて、中指を大地の蕾にゆっくりと挿入した。
「ぁっ…ああっ!!」
大地は叫んだ。
中指は少しずつ少しずつ、奥へと侵入してくる。
狭く閉じられた粘膜に、無理矢理異物をこじ入れられる感覚。
経験したことのない痛みに、大地は大きな恐怖心に襲われた。
「いやっ…いやだ、痛いぃ!!」
大地は大粒の涙をこぼして、懸命に身をよじった。
「うんうん、男の子だろ〜我慢我慢」
「怖くないからねー、ちょぉっと確かめてるだけだから〜」
両脇の男たちは、小さい子をなだめるような口調で暴れる大地を押さえつける。
脚を閉じようとしても、そいつらにがっちりと拡げられているため許されない。されるがままだった。
そんな大地を、シャマンは悲しい顔で見ていた。
「しかし指一本でここまで痛がる子も珍しいですね」
「そうだよな、普通はもうちょっと大人しいよな」
たくましい男たちは不思議そうに中村の手元を見た。中指は半分ほど挿入されている。
中村はふたりに答えた。
「すごく狭くてね。さっきからこれ以上挿れようとしたら…」
埋まった指を先に進めるため力を入れると、大きな抵抗感に阻まれた。
「あうゥっ」
大地が痛みに歯を食いしばった。
「ほら、すごいだろ?」
中村に示されて、角刈りとスキンヘッドの男はあんぐりと口を開けた。
「あらら、ホントですね。これだけで見るからにギチギチだ」
「ほぐしてないからってのもあるんでしょうけど、ここまで狭い子って初めてじゃないですか?」
挿入に苦しむ大地の菊門を三人の男たちが凝視する。
シャマンは気分が悪かった。