中村は大地と同じように小泉がどう出るのかひやひやしながら見ていたが、そこにふわりと柔らかい声が降ってきた。
「小泉様、僕のことをお忘れになられては困りますゥ」
ずっと黙っていた陰間の拓海だった。
鼻にかかった甘い声で、しどけなく小泉に寄り添う。
その手はゆらりと小泉の魔羅に伸びて、先ほど大地がしていたように小さくこすり始めている。
「お、おお、何を言っておる、可愛い拓海を忘れるはずがないだろう」
突然の快楽に腰をヒクつかせながら、小泉は嬉しそうに鼻の下を伸ばした。
「ウソ、新人くんに夢中になってて忘れてたァ。こんなに大きくしちゃって、憎たらしいったら」
すねるように口唇を尖らせるものの、その目は笑っていて、小悪魔的な魅力を多分に振りまいている。
「…すまんすまん、ハァ、ハァ…」
小泉はせっつくように拓海に口づけをしながら、その臀部に手を伸ばして菊門に指を挿入した。
「アッ…!僕以外の子に、あぁん…お熱になっちゃヤダよ?」
「うんうん、わかってるよ」
拓海のペニスは、薄く発毛している部分に向かって少しずつ上向き始め、次第に腹へくっつきそうな勢いで反り返っている。
「あっあうッ、…はぁぁ、あんっ!小泉様、小泉様ァ」
小泉の指の出し入れにシンクロして、拓海は切なげに泣いた。
拓海が可愛らしく甘えてくるので、小泉は大地への欲求を失ったらしい。
口づけの合い間に息を荒げながら中村に言った。
「中村屋の方針はわかった。その子を下がらせなさい」
「は、はい、かしこまりました」
互いをまさぐり合っているふたりを間近で見て固まる大地に、中村より先にシャマンが小さく声を掛けて自分の方へ呼び寄せた。
その合図にすかさず身を起して布団から退いた。
大地はシャマンの背後に隠れるように回り、その背中にピタリと寄り添った。
小泉の指はますます激しさを増し、勢い良く出し入れして拓海を責めた。
拓海は頬を紅潮させ、たまらないといった様子で喘いだ。
「あ、ああん、もう僕…っっ、早く小泉様の魔羅ハメてほしいっ…!」
その言葉を満足気に聞いた小泉は、大地の方を見てにやりと笑った。
「…よく見ておきなさい」
そう言って小泉は大地の正面に拓海の尻がくるよう、四つん這いにさせた。
そしてその背後から、勃起した魔羅を持ってゆっくりと少年の菊門に挿入した。
「!!!」
(あ…あんなとこにちんちんを…!!!)
大地はあまりのことに驚いて息を飲んだ。
「んっんん…」
拓海は悩ましげに眉根を寄せ、小泉の魔羅を迎えている。
指一本でもあんなに痛かったのに、こんなに太いものを挿入されてこの少年は平気なのだろうかと、大地は純粋に疑問だった。
「あぁ…小泉様のおちんちん、おっきい…」
「っ…どうだ拓海、気持ちいいか?ッ」
「んくっ、はい、すごく…あん、あっ…気持ちいいっ…すごくいいっ…あぁっ!」
すべてを収めてから前後に腰を動かしだした小泉に応じるように、拓海は腰を振り始めた。
魔羅の棒部分は拓海の菊門内部にこすられるように、出ては入り出ては入りをくり返している。
「ぁ…、…」
想像を絶するできごとに、大地はかえって目をそらすことができなかった。
シャマンの陰に隠れるようにはしているものの、そこからしっかりと小泉たちの行為に見入っていた。
すると、突然小泉が大地を見た。
大地はびくりと身を固くした。
「…大地よ、お前も早く、この拓海のような立派な陰間にならないとな」
そう言いながら笑ってピストンを続ける小泉だったが、だんだんと大地を捕らえる目がじっとりといやらしく輝き始めた。
そして微笑を浮かべたまま、先ほど大地の菊門に触れた指を見せつけるようにねっとりと舐めた。
小泉は拓海を貫いてはいるものの、頭の中では大地を犯していた。
大地の香りがする自分の指を舐めまわしながら、さらに恍惚の表情を浮かべている。
大地はその視線から逃れようと、シャマンの身体を盾にして身を隠した。
そして顔を伏せて、シャマンの背中の生地を掴んだ。
かげま。
オレはその仕事をするためにここに連れて来られた。
今、拓海という少年がしていることをするために。
ものが考えられない。
気分が悪い。
治まっていた吐き気が再び起こる兆しがあった。
「…中村殿」
隠れてしまった大地から、中村に視線を移し変えて小泉が呼び掛ける。
「大地が陰間としてデビューすることになったら教えてくれ」
中村はそう言われてピンと背筋を伸ばし、ほくほく顔で答えた。
「はい、かしこまりました」
「一番に声を掛けてくれよ」
「もちろんでございます」
大地はその会話を聞いて、怖ろしくてたまらなかった。
嘔吐感が増してくる。それをこらえるのに必死で、シャマンの着物を掴む手は真っ白になっていた。
不安でどうしようもなくなっているそんな大地を、シャマンは背中で感じとっていた。
「……」
やるせなさがシャマンの胸に走る。
誰にも気づかれないように小さく舌打ちをして、シャマンが口を開いた。
「小泉様、大地は少し気分がすぐれないようなので、わたくしたちはここで失礼したいのですがよろしいでしょうか」
「そうか?是非最後まで見てもらいたかったのだが…」
残念そうに答えながらも、小泉は休みなく腰を振っていた。
大地の様子と小泉を見て、中村が口を開いた。
「大切なお客様の前で粗相をしてもいけませんので、申し訳ございませんが」
大地の陰間デビューが上顧客に確約されて嬉しい中村の声は喜びで弾んでいる。
「うむ、わかった」
その返事を聞いて、シャマンは大地の肩を抱いてゆっくりと立ち上がった。
そして支えるようにして早々と部屋を出ていく。
ふたりの背後では中村が小泉に詫びている様子と、拓海の喘ぎ声が小さく聞こえてきた。
大地は少しでも早くこの場所から離れたくて、シャマンの支えにすがるように足早に立ち去った。