百華煉獄61
 目前のふんどしを見つめる。
 その下にある魔羅がびくん、びくん、と大きく脈打っているのがわかる。
「っ……」
 その気満々、と言うのだろうか、アカベコの興奮度合いが伝わってきて一瞬ひるんだ大地だったが、楓の姿を脳内に思い起こす。
 彼はまるでソフトクリームを食べるような感覚でなんの躊躇もなくこれを口にした。
 大地があんな風に魔羅を頬張れるようになるのはすぐには無理だが、ここ中村屋へ来てから勃起した大人の男性器は何度か見たし、実際触れてきた。
 意を決してアカベコの腰の近くにあるふんどしの結び目に手を伸ばした。


 その途端、大地は手を握られて引っ張り上げられた。
「あっ」 
 勢いで大地はアカベコの膝に座るような体勢で乗り上げてしまう。
「ちょ、何す…」
「ひひぃ、早く舐めたいのはわかるけどよ、雰囲気出していこうじゃないか」
「!」

 アカベコは自分に寄りかかるように座る大地の肩を抱き寄せ、顔を近づけてくる。
「ほォれ、口吸いも教えてやるっつってんだ」
「…っゃっ!」
 数日前にクロマサのしつこいキスに翻弄された大地は、あの二の舞はごめんだと顔を背けた。
 が、アカベコはその嫌がりも興奮の材料になったと見え、舌なめずりをして大地の首を自由にさせず可憐な口唇を標的に追いかけてくる。


「んん!!」
 ぶちゅう、と正面から遠慮なく口づけてきてすぐに舌を差し入れてきた。
 髭の感触も生ぬるい舌の感触もクロマサと同じで、大地はその気持ち悪さに悲鳴を上げる。
「っあぅぅ、やっめ…!」
「んーはぁ…ふぅぅ、ひひぃ…」
 アカベコの舌は分厚くて、大地の口の中を強い圧力をもって凌駕する。
 舌やその裏、歯列も歯茎も上あごも、大地がどんなに抗おうとも意に介さず舐めつくそうと縦横無尽に口内を貪った。

「ぷは、ぃ…やぁ」
 息も絶え絶え嫌がる大地の口唇を優しくはみながら、アカベコはその小さな手を自身の前袋に誘導する。
 そしてカチカチになった魔羅を布越しに触らせた。
「っっ!」
 大地がびくりとして手元を見る。その視界を遮るようににやついたアカベコが現れ、再びキスをしてきた。
「も、やっ…」
 また気持ち悪いキスだ、もう嫌だ、と抵抗の意を表す言葉は、無残にもアカベコの口内に消える。
 れろん、ぇろんと大地の口の中を舐めに舐めながら、自分の魔羅を触れさせている手を持ってそのままゆっくりとさすり始めた。


「うぅ、んっ」
 前袋の布があるとはいえ、勃起した魔羅が手の中にある。
 それがさらに昂っていくのが感触でありありと伝わってきて、大地は鳥肌が立った。

 大地の口元をべたべたに濡らしたアカベコは、そこからやっと離れて上擦った声で言った。
「はぁ、ぁあ…お客様の魔羅はお前らの飯のタネなんだからな、恭しく…っ、大切に丁寧に扱うんだぞォ?っ、ふっ…」
 そして大地の手の動きを誘導していた自身の分厚い手を放した。
「そのままひとりで続けてろ」
 そう言うと、大地の着物の帯をおもむろにほどき始めた。

「!!!」
 尺八の練習なのに。
 大地が着物を脱ぐ必要などひとつもないのに、裸にしようとしている。
 今のキスだってそんなことしなくたって今日の実技には支障がないはずだ。
 ミナトが言っていた通り、こいつはこの機に乗じて自分が愉しもうとしている。


「…脱がさないでよ、脱ぎたくない!」
 大地が抗うとアカベコは呆れたような顔で言った。
「お前がどうしたいかなんてオレには関係なーいーの。オレが脱がしたいんだから」
 大地の言葉などまったくの無視状態で帯をほどいたことによりどんどんはだける着物をぐいぐいと引っ張り、肩から落とす。
 大地はたちまちふんどし一丁で素肌を露わにさせられた。

 床に落ちていく着物をすぐに拾い上げ、大地は怒りで抗議した。
「やだってば、脱ぐ必要なんてないじゃないかっ!」
「だーれがちんぽこへのお触りを中断していいって言った?」
「!」
 アカベコは先ほどまでのニヤついた態度から一変して、低い声ですごんできた。
「お前はオレの立ち場をわかってないみたいだな。オレは教育係、お前に陰間とはどんなことをするのか教える立ち場だ。お前がどうしたいとか嫌だとか、
いっさい聞く気はない。いちいちそんなこと言って実技の進行を妨げてると、評価を下げてデビューできないようにすることもできるんだぞ」
「……!!!」
「それだとお前も困るんだろォ?だったらおとなしくオレの言うことを聞け」
 大地は評価と引き換えに思うまま子どもを凌辱しようとするアカベコの言い分に閉口した。


 なんて汚い大人だろう。
 ミナトが教えてくれた通りだ。
 自分を犯そうとしたクロマサと同じぐらいの下衆な男だと、大地は心底アカベコを軽蔑した。

 中村だって同じだ。
 いや、あの人こそすべての元凶なのだ。
 あの人はクロマサやアカベコのように直接陰間見習いにいやらしく触れるわけではない。
 だが自らが経営する店で最大限に利用するために圧倒的な威圧感で大地を支配し、従うより他にないとすべてを取り上げた張本人。それが中村だ。
 彼の悪質な想いを孕んだその体質は、自らの趣味と実益に叶ったものだというこんな下衆な男たちを呼び寄せる。
 自分はそんな中でデビューさせてもらうために耐えて言いなりになるしかないのだ。


「お手々がお留守だと言っただろう?早く可愛がってくれよ」
「っ」
 屈辱のため怒りを抑えきれない大地の手を取って、アカベコは先ほどまでさせていた行為を促す。
 『評価のため』には『言うことを聞』くしかない。
 大地はアリ地獄に落ちてしまったことをまた強く実感して、仕方なくふんどしの上からアカベコの魔羅を愛撫した。

「…ぁあ、いいぜェ。ふんどしから出して直接しごいてくれ」
 アカベコは露わにした大地の素肌の感触を愉しむように、膝に乗り上げているその小さな背中を撫でさすっていた。
 ふんどしの中のアカベコの魔羅はくっきりとカリの部分が浮き出るほど怒張している。
 大地は無言で前袋からそれを取り出した。


「っっ」
 ぼろん、と躍り出てくるアカベコの魔羅は、思った通り亀頭を露わにして固く張りつめていた。
 やはり勃起した魔羅の迫力は何度見ても慣れるものではない。
 しかし大地は我慢してそこに手を伸ばし、握った。

 大地が竿を上下にこすり始めると、アカベコは人差し指で大地の背中をつつつ…といたずらし始める。
「っ、…」
 背中の真ん中、縦のラインをゆっくりと撫で上げるという行為を繰り返すので大地は鳥肌が立った。
 それでも何も言わずに魔羅をこすり上げる大地の顔を間近で見て、アカベコはふふ、と笑った。
「あー、気持ちいいぜ。でもな、もちっと嬉しそうに魔羅に触れないもんかね。こうしたらどうだ?」
 アカベコは左手で大地の乳首を捉える。大地は思わず身を震わせた。
「ぅん!」
 つまみあげた突起を、ねじをひねるように優しくくりくりと愛撫する。
「ひへへ、ぷにぷに乳首がすぐ硬くなってきた」
「あっ…、ぁぅ」
 大地がその行為に翻弄されていると、ふふーん、とアカベコは大きく鼻息をひとつ吐き出した。そして何も言わずに今度は大地のふんどしのお尻部分、
たて廻しに中指をスッと差し入れた。
 そして大地が驚くより早く、その指は的確に大地の菊門を捉えた。


「!!!」
 膝の上のきゃしゃな身体が大きく跳ねるので、その動揺が手に取るように伝わってきたアカベコは大地の耳元で囁いた。
「指は挿れねェから。ちょーっと触るだけ」
 菊門に直接触れた武骨な指は、そこを揉みしだくようにくにくに、くにくにといやらしく動く。
「あっ、や、…ぅうん!」
「ぐひひ、そうそうその調子…顔が赤らんできて色っぺーぜェ?仏頂面で客のちんぽ触るのはご法度だからな」
 アカベコの指は中に入りこそしないものの、卑猥の権化のような動きで大地の菊門を可愛がる。
 それは心底少年の肉体が大好きだということが伝わってくるほど熱意のあるものだった。


 挿れないと言われたって、この男のことだからまったく信用することができない。
 大地は無駄だとわかっていても腰を浮かせて少しでもアカベコの愛撫から逃れようとするが、そうするとかえってアカベコは執着するようで菊門への
圧力が強くなる。
「ひゃ、や…ぁっ、ああっ」
「ひひ、かーわいいなァ大地は…」
 菊門を弄るのはそのままに、乳首に触れていた手を幼いペニスに伸ばす。そして紅潮した頬で戸惑う大地にアカベコは口づけた。
「、んんっ…!!」
「ある程度お触りされてても魔羅への愛撫を疎かにしないための練習だからな…はぁ…」
 背後から大男に抱きすくめられて口づけやいたずらをされ放題の大地は情けなかった。


「ちんちんは硬くなってきたな。反対にお尻はほぐれてきた…」
 大地の口元でまじまじとそう呟くアカベコの口調は今までと違い真剣味を帯びていた。
 それゆえに菊門に挿入を仕掛けてきそうで大地は気が気でなかった。

 しかし、アカベコの魔羅も大地の愛撫のおかげでギンギンに勃起していた。
 なので彼も本来の実技練習をばと、大地の髪を撫でて促した。
「さァ、いよいよ尺八に初挑戦だ。オレの股の間に座れ」
「……」
 大地は何も言わずにアカベコに命ぜられるまま彼の脚の間に座った。