百華煉獄65
「じゃあここらで…まずは昨日アカベコに教わったことをそのままやってオレをイカせろ」


 部屋の中央あたりに仁王立ちになったクロマサは、跪かせた大地を見下ろしながら笑った。
 昨日のアカベコのように不必要に身体に触れてくると用心していた大地は、あっさりと練習に入るクロマサを意外に感じて少々驚いた。

 大地がクロマサの股間へ視線を送ると、そこはまだ勃起していなかった。
 これを大きくさせて尺八しろと言うことなのだろう。

 尺八することに慣れてクリアしなければ先へは進めないのだ。
 クロマサに対する恐怖心は依然あるものの、怖気づいていても仕方ないので大地はクロマサの股間へ手を伸ばした。


「ひひ…」
 自身の魔羅に触れる大地を見ながら、クロマサは今からのことを想像して下品な笑い声を漏らす。
 三日前、手の中のコレが自分を恐怖と屈辱の底に突き落とした。
 しかしそう考えると何もできなくなってしまうので、大地は心の中でその思いを振り払った。


 着物の上からやんわりとそこを揉むと、みるみると硬くなるのがわかった。
 右手で包み込みながら左手をクロマサの着物の裾に差し入れる。
 今度はふんどし越しに魔羅を強めにこすってみた。

「いいじゃねェか。だいぶん成長したなァ大地よ」
「……」
 本音ではこういう行為にまだまだ抵抗があるので褒められても少しも嬉しくない。
 大地は何も答えずにクロマサの着物をはだけた。

 びくん、びくん、と前袋を押し上げる勢いで脈動している魔羅。
 見るからに窮屈そうで、クロマサの興奮状態が伝わってくる。
 大地は前袋の布をずらして魔羅を解放してやった。
 飛び出してきたそれは、ぼろん、と亀頭の重みもあり大地の目の前に飛び出してきた。


「…っ?」
 魔羅が大地の顔をかすめた瞬間、かすかに酸っぱいような臭気が漂ってきた。
(この匂い…もしかして)
 大地が嫌な予感に眉をしかめると、クロマサが肩をすくめて言った。
「そうだよ、昨日から洗ってない魔羅ですよ。さァ、がんばってちゅばちゅばしてね」
「!!!」

 『洗ってない魔羅を舐める実技もしてもらうぞ』とアカベコが言っていたことがさっそく行われると言うのか。
 多少の覚悟はしていたが、実際のこの臭気と触れ合うとさらに気分が悪くなる。
「オレァ汗っかきだからなァ、他のヤツよりゃ匂うかもな。ガハハ」
 嗜虐的なクロマサは大地がさらに躊躇するようなことを言って愉しんでいる。
 ただでさえ嫌なヤツなのに、大地はげんなりした。


 しかしそんなことも言っていられない。
 洗っていてもそうでなくても、とにかくこれを尺八してクロマサの評価を得なければならないのだ。

 大地はおもむろに魔羅の竿を握り、顔を近づけた。
 その時ふと、周りの状況が気になり視線を他へ移した。


 シャマンに群がっていた見習いの少年らはもうすでに個人個人の研修に励んでいた。
 どんなにシャマンが好きでも、彼らは自分がなんのためにここにいるか、何をすべきかちゃんと心得ているのだ。

 大地が一番気になるシャマンはというと、ひとりの少年の挿入練習を始めていた。
 大地にしていた時と同様、少年の足元を隠すようにして行っている。
 対象になっている少年はシャマンの腕に自身の腕をからませていた。


(……)
 大地はその見習いにはっきりと嫉妬した。
 練習とはいえシャマンに相対していられる少年が羨ましかった。

 それと同時にそれを見たくないので、視線を元に戻した。
 そこには下衆なクロマサの醜く怒張した魔羅がある。
 シャマンに挿入してもらっている少年とは雲泥の差のこの状況だったが、気を取り直して口を開けた。


 びく、びくっ…と脈動が激しくなり始めたそこを、目をぎゅっと瞑って亀頭ごと大きく飲み込んだ。
「ぉ、おぉ…」
 案外と大地が躊躇なく咥えたことで、クロマサは予想より早い快感に腰を小さく震わせて驚いている。
「昨日はお口に入れるまでずいぶんかかったらしいが、今日はえらくはりきってんなァ。心入れ替えたか」 
 頭上でニヤニヤと喜んでいるクロマサの洗っていない魔羅は、口に含むと口腔全体に臭気が広がり、それが鼻に抜けて吐き気が増した。
 眉をしかめて涙目の大地は明らかに苦しそうだが、またそれがクロマサの征服感を煽る。

(おえ、臭い…苦しい…!!)
 尺八を歓迎していない様子の大地だったが、昨日アカベコに言われたように口に唾液を分泌させて賢明に魔羅に舌を這わせる。
「っ、お前のその辛そうな顔が、おっ…たまんねェな」
 見下ろしながらそう言うクロマサの魔羅は口の中でどんどんと硬くなり、大きく膨らんでいく。 
 それにより嘔吐感は依然あるが、とにかく大地は無我夢中で尺八に励んだ。


 舌を這わせるのがひと通り終わったら、早くイカせるためにと行為を激しくした。
 頭を上下させて全体を口でこすり上げたり、それが苦しくなるといったん口から出して舌の先で敏感な部分を刺激してみる。
 クロマサの視線が自身に注がれていることを大地はしっかりと感じていたが、視線を合わせる気はなく辛そうな表情で口での愛撫を続けた。


 無理矢理男に要求されて惨めにも口淫を強いられているという姿が大地には似合っており、クロマサは切ない声を上げた。
「ぅ、おぅ!お前、やっぱりそういう顔がイイねェ…ッッ」
「んぐぅ、っ…ぅぅぅ」
 イカせることに必死な大地はそう言われてもどういうところを評価されているかわからなかった。 
 しかし尺八のコツを掴んだ大地が行う苦しげな口淫は、クロマサを興奮の極致へ昇りつめさせるのに充分だった。


「…あっく、もう…」
 クロマサは小さくそう呟くと、大地の頭に手を掛けた。
 尺八の間中べたべたと身体に触れてきたアカベコに対して、クロマサは意外にも大地に手を伸ばしたのはこの時が初めてだった。
「出すぜェ」
 そう言って、クロマサは大地の頭を強く自身の魔羅へ引き寄せた。
 それにより喉の奥まで魔羅が入ってしまい、大地はえづいた。
「!ぉえっ」
「イク、イクッ!!!」
 えづく大地にまったく介さず、クロマサはそのまま大地の口の中に精を放った。

「!!!!!」
 びゅるるる!!と喉の奥に向かって放出される精液の勢いはすさまじく、大地はどうすることもできなかった。
「っ、ぅえ」
「っっ、ぁ、ぁぁ〜…」
 大地が無我夢中でクロマサの魔羅から逃れようとしても、絶頂の余韻を最後までそこで堪能したい彼は小さな頭を掴んだまま赦さなかった。


 びくッ、びくびくっ!と最後の一滴まで大地の口の中に収めようとクロマサは腰をわななかせる。
「……!!」
「っ、あぁ、はぁ…」
 満足気に大地を見下ろしながらクロマサが魔羅を抜き出した途端、大地は俯いて尺八グッズのバケツに精液を吐き出した。
「おええええっ!!!」
「あーあ、お前せっかく尺八の技術は上がったのにゲロってんじゃねェよ」
「ぐ、ぅえええッ…げえええっ」


 昨日アカベコが大地に対して行った三度の口内射精。
 そのどれより苦しかった。飛び出してくる精液の量も勢いもクロマサの方が何倍もすさまじかったためだ。


「うっぐ、ええ、げええ…ッッ」
 クロマサの白い精液を、涎と鼻水にまみれながら必死でバケツに吐いた。
 肩で息をしながら苦しさにむせる大地の顔を、クロマサはタオルで荒々しく拭ってやる。
「うぅっん!」
 それすらも嫌がって逃げようとする大地の首根っこを捕まえてクロマサが言った。
「おいい、精液吐かれるのってよォ、出した方からすると結構ショックなんだぜ?」

「げぇ、え…ハァ、ハァ…」
 クロマサから受け取ったタオルで口元を押さえて、大地は呼吸が落ち着くのを待った。
 どうにか息が整った時に、やっとクロマサに意見できた。
「そ、そんなこと言っても…あぁ、ハァ、ハァ…あんなの…」
 いきなり喉の奥に太いものを突きつけられた上、その先から勢い良く射精されるなどどんな人でも生理的に吐いてしまうだろう。
 大地が痛々しげに涙目で意見するのを見ても、クロマサは無情に告げた。
「『飲んでくれ』って要求する客にもそうやって言い訳するのか?飲めるようになんないと評価できねェし、ってことはデビューできませーん」
「……ッ、ハァ、ハァ…」

 意地悪くからかうような口調だが、クロマサの言うことは真実だ。
 震える手で口元にタオルを当てて肩を上下させながらショックを受けている大地を、クロマサはまた色を帯びた視線で見つめ始めた。