なんとか咳き込みがマシになったクロマサは、ヒィ、ヒィ、と必死で息をしながら中庭の地面に転がったまま、やっとのことでしゃべった。
「シャ…シャマン…おまぇ…」
シャマンを見上げるクロマサの目には、禁を犯して見習いをレイプしようとしたことが見つかってヤバイという焦りが見てとれた。
と同時に、それを邪魔しやがった上に暴力をふるわれ忌々しい、という苛立ちがほぼ同じ割合で浮かんでいた。
やや苦しさが軽減したクロマサは、突然暴行してきたシャマンに猛抗議した。
「な、なんだよ、なんだよッお前、いきなり…殺す気か!」
本当はやり返したかったが今まで首を絞められていたことでまだ体力が回復しておらず、これが精いっぱいだった。
「……」
シャマンは何も答えなかった。
その表情はほぼ無に等しく、真顔でなんの感情も読み取れない。
ゼィ、ゼィ、と息を荒げながらクロマサはシャマンを見上げた。
おかしなことに、クロマサはこんな時なのに思わずシャマンに見惚れてしまっていた。
こんな風にまじまじとこの男と対面したのは初めてではないか。
彼の端正な顔立ちを改めて認識した。そして、そんなシャマンを羨ましいと感じた。
(すげェ綺麗なツラ…オレもこんな顔に生まれてれば、入れ食い状態でガキとウハウハ、ヤリ放題だったろうに…)
しかしハッとなって、そんなこと思ってる場合じゃねェ、と慌てて弁解した。
「おい、お前…なァにを勘違いしてんのか知らねェけどなァ、オレァ別段、大地をレイプしようなんて気ねェからな!?なんかほら…お前優しいからさ、
挿入の練習で手加減してんじゃねェかって心配して…遅々として進んでねェみてェだったから、アカベコとオレとでハメる練習してやろうって話になっただけのことさ!」
素っ裸で庭に座り込むクロマサの股間は首絞めのショックで少し小さくなってはいたが、まだ勃起していた。
それを目にしてシャマンは眉を小さくひそめた。
シャマンの苛立ちが伝わったのか、クロマサは言い訳を続ける。
「ほんと、最後まで…セックスする気なんてさらさらなかったぜ?大地のためを考えての、あくまで挿入練習よ!それ以外の意味はまったくねェって。
なのにあのガキ、ビビって暴れちまって…アカベコがちょっと叩いたら気絶しちまうんだから。ったく、あいつ大げさなんだよな〜、おとなしくしときゃァ
痛い目見なかっただろうに。こんな変な誤解を招くようなことにならなかったのによォ、黙ってオレらの言うことに従っとけっつーの」
「……」
クロマサが語り終えると、シャマンの周りの空気が変わった。
凍りつくほどの冷たさを纏うのには変わりないが、反面、熱を感じさせる感情の変化が感じ取れた。
大地はシャマンとクロマサの様子を用具室の扉から静かに見ていた。
腕や脚は恐怖のせいかはたまた数々の凌辱を受けたせいか震えが止まらず、なかなか力が入らなった。
クロマサがまくしたてる言葉がぼんやりと聞こえてきたが、意味をあまり理解できなかった。
それでも大地に非があるような物言いを繰り返すクロマサに対し、とても気分が悪くなり傷ついたことは確かだった。
シャマンはこちらを見つめてくる大地をちらりと一瞥する。
裸に剥かれた少年。
白くて幼い身体には、べったりと大量のローションがついて光っている。
泣き明かして呆然としているその姿は、クロマサとアカベコが大地にどれほどのショックを与え、傷つけたかが見て取れた。
大地の痛ましさにシャマンの涼やかな目尻が一瞬、く、と苦し気に歪んだ。
次の瞬間鋭い頭痛が走ったかのように眉間にしわを寄せ、目をぎゅっと瞑る。そしてそれを振り払うように頭を軽く振った。
その後、ハァ、と大きく息を吐いた。吐息が小さく震えていた。
「…黙って従え、か」
シャマンは呟くと同時に、先ほどの無の様子に戻った。
「お前は…子どもにも感情があるのを知ってるか?」
「…あァ?」
「子どもにもお前たちと同じ感情があるのを知っていて、こんな悪さを働いているのか」
抑揚のない声でシャマンは淡々とクロマサに尋ねる。
一方クロマサは先ほど受けた暴行に加え、責めてくるその態度の何から何までもう我慢ならなかった。
こんな目に遭わせたシャマンに反撃するべく腹立たし気に立ち上がろうとした。
「ゥうるせェ、偉そうにしやがっ…ぎゃあああ!!!」
シャマンに食ってかかろうとしたクロマサが、すさまじい悲鳴を上げた。
大地はビクリと身を硬くした。
シャマンがブーツでクロマサの男性器を踏みつけたのだ。
「あっぐぁあ…!シャ、シャマ…!!!」
あまりの痛みにその場から動けないでいるクロマサに対して、シャマンは無機質な声で呟いた。
「お前らはみんなそうだ、みんな…」
ブーツの先はクロマサの隆起したペニスの裏側に添い、またかかとの近辺は陰嚢を踏みつけていた。
「ぎぃあッ…あがが…!!」
クロマサは悲痛な叫び声を上げている。シャマンはそれを無視して続けた。
「お前らはいつもお遊び感覚…ほんの軽い気持ちで愉しんだんだろうが…」
シャマンの目からは、感情がいっさい消えていた。もう冷たいとすら思えない虚無の瞳だった。
シャマンの体重がゆっくりとゆっくりとブーツの先にかけられていく。
「あっひゃあ、や、やァめ…!!」
「子どもにとって、性的暴力をふるわれることがどれほど怖ろしくどれほど傷つくことなのか…わかっているのか」
逃げようにもクロマサは、睾丸を地面に縫いつけられていた。
首を絞められていた時などとは比べ物にならないほどの激烈な痛み。
シャマンのブーツを脚ごとどかそうにも男根に加えらえる力で気が遠くなりかけ、指一本動かすことができなかった。
「…まァ…わかっていないからこそ、悪びれずに幾度も子どもを辱められるんだろうがな」
シャマンはそう言って、ブーツの先をやんわりとひねった。
「……!!!」
あまりの痛みに、クロマサは口を大きく開けて震えることしかできないでいた。
ダラダラと汗やヨダレを垂らして苦しがるクロマサに、感情のこもらない空洞のような瞳でシャマンは尋ねた。
「子どもたちがどれほどの恐怖と屈辱に晒されているのか…この魔羅が二度と使いものにならなくなれば、お前にも少しは理解してもらえるんだろうか」
「!!!!!」
クロマサのペニスはもう、シャマンのブーツの下で縮こまっていた。
シャマンの目は、虚ろでありながら歪んだ瞳を宿している。
こいつ、このままオレのチンポコと金玉潰しちまうんじゃねェだろうな。
それだけは、それだけはやめてくれ。
「あうあぁ、シャ…シャ…」
やめろ、やめてくれ。
クロマサはその一言が言いたいのに、どうしても言葉が出なかった。
