スリーパーズ33
 大地はどうにかシャマンの腕から逃れようともがいていたが、それも看守専用エリアに連れてこられるまでだった。

 この男には、今までどんなに懇願しても何一つ聞き入れてもらえなかったことを思い返す。

 なので暴れるのをやめた。この少年院に来て、大地が初めて何かをあきらめた瞬間だった。


 看守専用エリアに足を踏み入れるのは、これが初めてだった。

 入るとすぐに大きな部屋が一つあり、そこにシャマンとナブーが同室で過ごしているようだった。

 そこは広く、仮眠用のベッドが2つあった。個人別に用意されているようだ。シンプルに何も置いていない方と、雑然とものが積み上げられている方がある。

 どちらがどちらのものか、大地はすぐに分かった。雑然としている方に、少年モノのいかがわしい雑誌やDVDが所狭しと置かれていたからだ。


 部屋の壁には、かなり昔に撮影したであろう邪動少年院の写真が飾られていた。

 ナブーのベッドの近くにはロッカーがあり、そのあたりの床にはビール瓶や衣服が散乱している。

 一方シャマンのベッド横にはソファがあって、その前のローテーブルに煙草と灰皿が置いてある以外は、整然と整えられていた。

 2人の性格の違いがよく出ていた。


 大地は手錠を外され、シャマンによって部屋の中央にあるテーブル前に連れてこられた。

「お仕置き部屋へようこそ!」

 ナブーは大地の顔を覗き込んでおどける。大地は体を硬直させたまま、ビクリと肩だけ震わせた。

 『お仕置き』という響きがたまらなく怖ろしかった。普段行われている虐待に、その要素が加わるのだ。どんなことをされるのだろう。

 シャマンとナブー2人から一度に…それも初めてのことで、大地は恐怖で目の前がかすみ始めていた。


「っ!!」

 シャマンに首根っこを掴まれ、テーブルにうつ伏せに倒される。少し背が高いテーブルのため、大地はつま先で何とか床に立った。

 左手は後ろにひねり上げられてひどく痛んだ。

 ナブーはおもしろそうに、大地の顔側へ回ってくる。椅子をわざわざ持ってきて、本格的にこの時を愉しもうとしていた。


「ナブー、声に出して手紙を読んでくれ」

 シャマンの要求にナブーは大きな声で応じた。

「『お母さんへ なかなか手紙を書かなくてゴメンね。』」

 大地はたまらなくイヤだった。こんな最低のヤツらに、自分の家族にほんの少しでも触れてほしくない。我慢ならなかったが、目をつぶって耐えるしかなかった。


「『お母さんもお父さんも、おじいちゃんも大空もみんな』…って、この大空ってのはなんだ?弟か?」

 ナブーが手紙を読むのを中断し、質問してきた。大地はうつ伏せの状態で、目を閉じたまま無言でうなずいた。

「ヘェェ~…弟はいくつだ?」

 ナブーが何故大空に興味を持つのか分からない大地は、様子を探るように目を開け素直に答えた。

「8歳…」

「8歳か。ちょおぉっとチビすぎるかなー…」

 その言葉を聞いて、大地はナブーが少年愛者的視点から大空を見ていることに気づいた。ドッ、ドッ…と鼓動が跳ね上がった。

「ま、でもいいか。ナニ?大空はお前に似てカワイーの?」

 ナブーは大地の顔を覗き込んでくる。その顔は、新しく現れた大空という存在に明らかに性的興奮を覚えている、下劣極まりない男のものだった。

 大空の何が『ま、でもいいか』なのだろう。そこを深く考えるとゾッとする。こんなヤツに大空の名前を口にしてほしくない。大地は再び目を閉じ、答えることを拒絶した。

 ナブーはその意志に気づき、大地の髪を掴んで強引に上向かせた。

「あゥッ…!」

「何だその態度はァ?」

 先程までのニヤついた態度から一変し、怖い顔ですごむナブー。

「お前、自分の立場が分かってないみたいだな。オレたちの言うことを大人しく聞かないから、今ここに連れてこられてんだろーが。オレの質問に答えろ!」

 シャマンに抑えられたままナブーが掴んだ頭を揺らすので、大地は痛くてたまらなかった。いやいやながら、顔を歪ませて答えた。

「ぁ…あんまり似てないって言われる…」

「ふ~ん…」

 それを聞いてナブーは残念そうな顔になり、大地の頭を放した。


「それぐらいにして、手紙の続きを読め」

 2人のやり取りを黙って見ていたシャマンがナブーを促す。

 ナブーはハッとして手紙を見た。大地の弟に気をとられて、読んでいたことをすっかり忘れていたようだ。

「続き読むぞ。『ここの少年院に来て、早くも4ヶ月が経とうとしています。僕は元気と言いたいところだけど、本当は元気じゃありません。ここはひどいところです。ここは地獄です。

僕もラビも一日でもいいから早くここから出たいです。』」

「そこまではまだいい。問題はここからだ」

 シャマンは背後から大地に覆いかぶさり、耳もとで笑う。大地はいたたまれなくなり、肩をすくませた。ナブーが続ける。

「『僕たち2人は、受け持ちの看守の男2人に初日から目をつけられてしまいました。気まぐれに殴られたり、蹴られたりしています。それだけじゃありません。シャマンとナブーという

この2人の看守から、僕とラビは毎日』」

 最後まで読んで、ナブーは大地の顔の前に手紙を置いた。そしてため息をつきながら残念そうな表情で言った。

「オレは心外だよ、大地。お前は特別に目をかけて可愛がってたつもりだったのに、オレたちのことをこんな風に思ってたなんてよ。なァシャマン」

 冷酷に大地を見下ろしている男に、ナブーは同意を求めた。

「ああ…」

 シャマンは答えながら大地のお尻をまさぐりだした。

「んぅぅっ」

「それを母親に…外部の人間に教えようとしていたとはな。オレたちの愛情が伝わってない上に、裏切られたというわけか」

 シャマンはテーブルに押し倒している大地を再び立たせた。そして力任せにズボンを引きずりおろす。

「はっ…!」

 トランクスも下ろされ、シャマンが大地の右脚を背後からすくい上げた。

「おら、もっと脚を拡げろ」

 左脚首にズボンとトランクスをだらしなく残して、大地の下半身は露わにされた。


「くくく…」

「ひひひひ…」

 シャマンとナブーの笑い声が小さく響いている。

 大地は再び泣きだした。そんな大地に容赦なくシャマンの手が伸びる。

 また大地をテーブルに押し倒した。今度は大地の前にいるナブーがその手を抑えた。

 最初の時よりもテーブルに乗り上げる格好になったため、大地の脚は完全に宙に浮いていた。


「さあ、今からお前にクイズを出してやろう」

「お~、おもしろそうだな!」

 シャマンが大地の丸いお尻をまさぐりながら言う。ナブーは今から何か楽しいことが起こると予感し、色めきたった。

 どうせろくでもないことに決まっている。大地は不安で胸が押しつぶされそうだった。


「これからお前のケツにあるものを入れる。それが何かを当てろ」

 こともなげに言うシャマン。

 お尻に、あるものを入れる?見当がつかず困惑する大地に、シャマンは片方の口の端を上げて笑った。

「オレは優しいから、二択にしてやるぞ?まず1つ目はオレの指」

 そう言って大地の目の前で、中指をいやらしくクイクイと動かす。シャマンがいつも自分のアナルの中であんな風に動いていることを思い出し、大地は真っ赤になった。

「そしてもう1つは…コイツだ」

 シャマンはおもむろに、制服のベルトにいつも常備しているあるものを抜きとり、大地の前に置いた。


 ゴトン、と大きな音を立てて目の前に現れたもの…ゆうに50センチはある、鉄製の太い警棒だった。

 無造作に置かれたそれは、鈍い光を禍々しく放っている。自分をはじめラビも他の少年も、これで何度殴打されたことだろう。大地の赤らんだ顔が一気に青ざめた。


 これは『お仕置き』だ。いけないことをした自分を戒めるために開かれたものなのだ。

 それなのに、選択肢の1つであるシャマンの指などという答えがあるはずがない。いつもされていることと同じになってしまう。

 なら、残された選択肢、警棒を突っ込まれることに決まっているではないか。


「い…いやっ、イヤだァッ!!!」

 恐怖で暴れ出した大地だが、この男たちの力の前では空しい抵抗だった。

 シャマンは、自分の与えたかった恐怖が大地に伝わって興奮していた。そのペニスはもう大きくなっている。

 一方ナブーもすでに勃起しており、暴れる大地を片手で簡単に抑えつつペニスを露出した。


 シャマンはベストのポケットから瓶を取り出し、大地のお尻の上に高く掲げて中身を下へ垂らした。中はローションで、その冷たい感触に大地はビクリと身を揺らせた。

「たっぷり塗っておかないとな」

 シャマンは逆さにした瓶を楽しげに上下させる。どぷん、どぷんと粘度の高い液が垂れて、大地のお尻はもちろん、内腿からふくらはぎ、ペニス、机の上、足元に落ちるズボンなど、

すべてがローションまみれになった。