スリーパーズ37
「おぉ、もー出すぞ、出すぞっ」

 ナブーはガンガンと腰を振っていたが、そう言って大地のアナルからペニスを抜いた。

「んんっ」

「あ…あ、イクッ!!」

 ナブーは大地の顔に射精した。ドロドロとした精液が大地の右頬と口元にべっとりと飛び散る。

「――〜…おーぉ〜…」

 ペニスをこすりながら最後の一滴まで惜しみなく大地に放ち、ナブーはその姿を見下ろした。


 大地は二度続けて男たちに犯されたことで放心状態だった。

 薄い肩や胸は大きく呼吸するたびに上下している。視線はとろんとし始めていた。

 そんな大地を見てナブーはニヤリと笑い、シャマンの方へ振り返る。

 シャマンはソファに腰掛けたまま、グラスにワインを注いでいる最中だ。その股間は今のナブーと大地のセックスを見て上向いている。すでにローションが塗られているのか、てらてらと光っていた。


 ベッドの上でぐったりと横たわる大地を、ナブーは無理矢理起こした。そして神技のような早さで大地の手首に手錠をかけた。

「シャマン様がお待ちだぞ?」

「っ…!!」

 ニターっと嫌な笑みを満面にたたえ、ナブーは大地の後ろに回り込む。そして背後から太腿をそれぞれ腕ですくい上げた。

「あっ!」

 痛いほど開脚させられ、そのまま持ち上げられた。ペニスもアナルもすべてが丸見えのポーズだ。

「―――…やだ、もう…やー…」

 大地はもうこれ以上弄ばれることが我慢ならず、べそをかいた。ナブーはそれを見て欲情する。大地が力なく首を横に振ると、髪がナブーの胸に当たりくすぐったかった。


 ぐふふ…とひげ面の大男は喉で笑いながら、大地をシャマンの元へ連れていく。

「〜〜〜…ぅ〜…」

 シャマンはグラスのワインをぐいっと仰いで、泣きじゃくる大地を見た。


「シャマン様、ご所望のデザートでございます。すぐに美味しく召し上がっていただけるよう、私めが今しがたまで、丹精込めてよォく調理させて頂きました」

 うやうやしく頭を下げるナブー。シャマンはナブーの芝居に苦笑しながらつきあった。

「ああ、待ちくたびれたぞ」

 座っているシャマンには、ナブーが抱きかかえている大地の股間が顔の少し上あたりに位置するようになる。

 ナブーに舌で執拗に責められた小さなペニスは唾液でべたべたと濡れており、お尻のふくらみにもローションがついて光っていた。アナルはつい今までペニスで蹂躙されていたせいで、

少し出血している。


「…もう、許してぇ…」

 長いまつげを濡らして目を伏せた大地が発した言葉に、シャマンはピクリと反応した。

「…ふっ…ははっ…ははは!」

 シャマンが急に大きな声で笑い出したので、大地を抱えているナブーが面食らった。

「ど、どうしたんだよシャマン」

「っ…ふっ…『許して』か。大地の口からそんな言葉が聞ける日が来るとはな」

 シャマンは大地を見上げる。大地は屈辱に目を伏せたままだ。そしてそのまま口唇を震わせて続けた。

「許して…お願い、許して…」


 シャマンはそう繰り返す大地をしばらく見ていた。入所してきた頃から今までの大地を思い出す。

 自分の行為にどんなに打ちのめされても、大地の瞳は光を失わず、澄んでいた。心は決して屈しなかった大地が今、自ら許しを乞うている。

 それはきっと、これ以上犯されたくない一心の発言だろう。だがこの言葉を言わせたくて大地に執着してきたシャマンは、気分が高揚し嬉しくてたまらなかった。


「…お前は最初から言うことを聞かず、反抗的だったな。挙句の果てには今回の手紙事件だ。『許して』もいいが、もっと先に言わなきゃならないことがあるんじゃないか?」

 シャマンが自分に言わせたい言葉が何か、大地はすぐに分かった。だがなかなかその気にならず、言い淀む。

 しかし、今までの凌辱の恐怖を思い出すと、思わず口からこぼれた。


「…ごめんなさい」

「あ?聞こえないなァ?」

 絞り出すような声で詫びる大地に、後ろからナブーが茶化す。

「ごめんなさい」

 精液で汚れた頬に、涙が伝い落ちる。そんな大地を見て、シャマンとナブーは目配せをし、うなずきあった。


「さあさあ、シェフの私めが今まで丁寧に調理させていただいた、できたてほやほや、絶品の少年料理でございます。シャマン様、ナイフのご準備はよろしいですか?」

「ああ、いつでもOKだ」

 かしこまった口調のナブーに、シャマンはペニスを示してうなずく。

 やっとの思いで許しを乞うて詫びたのに、この2人はまったく関係ないといった感じでことを進めようとしている。大地は再びべそをかき始めた。


「―――…っ、ごめんなさい、ごめんなさい…だから、もう許してェっ」

 シャマンはニヤリと微笑む。ずい、とナブーがシャマンの前に歩み出た。

「では私めが直々に、シャマン様のお口に少年をお運びいたしましょう」

 そう言ってナブーは、シャマンのペニスの先端に大地のアナルをあてがった。くちゅ…という小さな音が響く。

「やだ、やだ〜っ!…ごめんなさいぃ!」

 大地は身をのけぞらせて暴れるが、手錠をかけられた腕はシャマンが、拡げられた脚はナブーが捕らえているため何もできない。

 ナブーは大地の背後で、シャマンのペニスをアナルに上手く入れようと、視線を宙に浮かべて角度や場所などを探っていた。

「んん?あれ?…お?」

「だめぇ、許してっ…!」

 ナブーによって、嫌がる大地のアナルがシャマンのペニスの先を愛撫する形になっている。シャマンの息が上がってきた。

「ああっ、見えないから場所が分かんねェな」

 ナブーはひとりごちて、おもむろに前から大地のアナルに手を伸ばした。そして無遠慮にいきなり中指を挿入した。

「ひん!」

「あ〜あ〜、ここだここ」

 強張る大地の耳もとでそう言って、2〜3度指を細かく前後しアナルをくすぐって、ナブーはそこを外側から指で拡げた。


「シャマン様、どうぞお召し上がりください」

 ナブーの言葉を合図に、シャマンのペニスが再び大地のアナルにあてがわれる。

「―――…ぅ〜―――…ごめんなさい、ごめんなさいっ!!」

 大地はシャマンの目を見てすがるように謝った。シャマンはそれを見て、悦びのあまり頭がしびれた。無表情だが息が荒くなり、ペニスがさらに大きく膨らんだ。


「ごめ…あっ!いやぁっ…!」

 シャマンのペニスは無情にも大地を再び貫いていく。大地は背後からナブーが体重をかけてくるので、否が応でもペニスを飲みこんでいかざるをえなかった。シャマンの上に座るような格好になる。

「あうぅ、痛…ん〜…」

「あら、喰われたのはシャマン様の方だったかな?」

 ナブーはかがんで、シャマンのペニスが挿入された大地のアナルをいやらしく覗き見た。シャマンはククク…と喉で笑う。

 身を起こしてナブーは興奮気味にシャマンに言った。

「しっかし、大地持ってお前の入れてると、すっごい抵抗力…って言うのかなぁ、大地の中にぐっ、ぐって入ってくる感覚が伝わってきてさ。思わずオレがハメられてんのかと錯覚したよ」

「よせ、気持ち悪い」

 ばっさり切り捨てたシャマンに肩をすくませて、ナブーはソファ近くのシャマンのベッドに腰掛けた。


「あっぅっ、ごめんなさい、許して…ごめんなさい」

 苦しそうに眉をひそめ、目を閉じてそう繰り返す大地。

 その手に掛けられた手錠が自分の腹に当たり冷たい。シャマンは大地の繋がれた腕の中に、自身の頭を通した。大地はシャマンの首に抱きつくような姿勢になり、目の前の冷酷な男と

視線が交わる。

「ぅっ…うぅっ…」

 薄い胸を大きくわななかせながら、大地の瞳から涙がこぼれた。

「シャマン…許して…」

「大地、さっきからお前は『許して』と繰り返すが、いったい何を許してほしいんだ。オレに何を詫びている?」

 繋がったまま動こうとせず、鋭い視線を大地に向けるシャマン。

「うう―――〜〜っ…」

 時折、ひく、ひく、と呼吸を乱しながら大地は頭を振った。


 シャマンの問いかけは、心身ともに痛めつけられ錯乱が生じている大地には答えられるはずもなかった。ただこの地獄のような輪姦から解放されたい。『許して』はその一心が言わせた言葉だ。

 絶え間なく痛めつけられ、傷つけられ、大地の何かが崩壊していく。瞳からは、この一件前までの明るく穢れのない光が消えてなくなり、その代わり暗い絶望の色が広がりつつある。

 シャマンはソファ横に置いてあったタオルをとって、大地の頬についているナブーの精液を拭き取ってやった。そして呼吸を小刻みに繰り返す、小さな口唇にくちづけた。

「……っ」

 大地はギュッと目をつぶる。その拍子に、瞳にたまった涙がすぅっと頬を流れ落ちた。


 口唇をはみ、舌をからませて大地の口をも犯す。大地は小さく呻きながら、シャマンの侵略に耐えた。

 ちゅ、と音を立てながら離れたシャマンは、大地に命じた。

「お前が動け」

「っ…!」

「オレは動く気がないからな。お前が自分で腰を動かさなければ、ずっとこのままだぞ?」

 そう言ってシャマンは大地の身体を抱きしめる。そしてべたべたと背中やお尻に触れてきた。シャマンの手や密着した胸に嫌悪感を抱いた大地は、意を決して腰をくねらせ始めた。


「あっう、はぁ、ん、あん、あっ」

「っ…ふ…」

 大地はシャマンの首に腕をかけたまま、目をつぶって上下にゆっくり動く。そのため自分のペニスをたっぷりと堪能しているように見えて、シャマンはより興奮した。


「そんなやんわりじゃあ、なかなかイカないぞ」

「うぅん、あ、ぁっぁぅ」

 シャマンから早く離れたくて懸命に腰を動かす大地。それを分かっていてわざと大地を急かす。

「ほら、もっと早く」

「っ、ダメっ、無理ぃッ…ぅんっ」

「何が無理だ。出し入れをしっかりやれ。その様子じゃお前はよっぽどオレと離れたくないんだな」

「……っ!」

 そう言ってシャマンは再び大地の口唇を奪った。大地はそのくちづけから身を捩り、抗いながら言った。

「んんっ、許してシャマン…許して…」


「許してほしいのは、今までの自分の愚かな行いか」

「っ…!!」

「お前はこのお仕置きから解放されたくて言ったんだろうが、そもそもオレに歯向かったことからお前はこんな目に遭ってるんだ。すべては大地、お前が無知でバカなガキだったからだ」

 シャマンの目はギラギラと光り、大地の瞳を蛇のように捕らえている。大地は何も言えなかった。

「早く解放されたければ、それを認めてオレに許しを乞え。詫び続けろ」

 シャマンは大地に挿入したまま、強引に姿勢を変えソファに押し倒した。


「ああ!」

「ほら言え。『僕が悪いコでした』『ごめんなさい』『許して』」

 シャマンは大地に覆いかぶさり、上から促してくる。

「…っ僕が、悪いコでし…た」

 大地は、本当はそんなことを認めたくなかった。暴力と虐待で立場の弱い者を支配しようとする、下劣で最低の看守たち。

 そんな理不尽なヤツらに対する大地の正義感や反抗心から、どんなに虐げられても恥ずべきところはないと信じて、今までこの男たちと対峙してきた。それはラビも同じだろう。

 だが、今ここでこの男たちにされたこと、今されていること、これからされるであろうことを思うと怖ろしくてたまらなかった。その圧倒的な力を持つ恐怖心から、大地は思考が麻痺し、命ぜられるがままに

認めさせられた。

「ごめんなさい…許して…」

 大地はシャマンに詫び続けた。よく働かない頭でもその屈辱感は耐えがたく、大地の目からは涙があふれて視界がぼやけた。


 ついに大地の心が折れた。シャマンはこの上なく心が満たされた。

「ふふふ…」

「あくっ!」

 シャマンが大地をゆっくりと突き上げる。大地はみるみるうちに苦しげな表情になり、シャマンをより昂ぶらせた。


 2人が折り重なっているところにナブーがやってきた。全裸だったが肩にタオルをかけており、そのペニスは勃起していた。

「ほれ大地、お前の好きなオレのちんぽだゾー」

 そう言って大地の口元にペニスを持っていく。

「ハメた後のちんぽ咥えるの、前にイヤがってたからちゃんと洗ったんだ。おら、さっきみたいに熱心におしゃぶりしてくれよ」

「うう、ごめんなさい、許して、ごめんなさいっ…」

 シャマンに揺らされながら、先程命じられた言葉をただ繰り返す大地。その頬にペニスを突き立てていたナブーは、シャワーを浴びていたためシャマンと大地のやり取りを知らず、不思議そうな顔をした。

「どしたんだコレ。もしかしてあれからず〜っと言ってんのか?」

 尋ねるナブーにシャマンは答えた。

「…こいつがフェラチオを熱心にやるのは、お前のペニスが好きだからじゃない。ケツに突っ込まれたくないからだ。1回でも多くケツ以外でイカせて、このお仕置きをとっとと終わらせたいって魂胆だよ」

「そうだったのかよ」

 ナブーは残念そうに大地を見た。シャマンも腕の中の大地を見下ろす。

「そういうのも含めて、謝らせている。『僕が悪いコでした』『ごめんなさい』ってな」

「しっかり騙してくれちゃって…しかもさっきは『おちんぽでアナルをずぽずぽされるのが大好き』って言ってなかったか?アレも嘘ってことか…ホント『悪いコ』だな」

 シャマンの言葉を受けてナブーはそう言い、戒めの意味を込めて大地の乳首を軽くひっかいた。大地はビクンと身を震わせた。

「あぅっ」

「まぁ大地がどう思おうと、オレはフェラしてもらうの大好きだからな」

 大地の髪を掴み、口に咥えさせようとするナブー。

「っぁっ、許してェっ!ごめんなさいっっ…」

 首を振って拒絶する大地の口に、ナブーは容赦なく無理やりペニスを突っ込んだ。

「うぐぅっ…!!」

「っあ――…さっきみたいに身ィ入れて奉仕しろよォ。おクチにたんまり射精してやるからなァ」

「ぉぐ…ぅっ…!」


 お尻にはシャマンのペニスを挿入され、口にはナブーのペニスが収められている。それらがおのおの好きに動きまわり、大地の心を身体を、翻弄し、蹂躙した。

「ぁっ、がぽっ…うぅ、ぉっくっ…」

 ナブーに口を犯されているせいで言えはしないが、大地はずっと頭の中で『ごめんなさい』『許して』を呪文のように繰り返していた。

 ヨダレを垂らして2人の男に弄ばれている大地を見ると、シャマンは欲情をあおられ、腰のピストンが自然に速くなった。

「っっ…!うぐ、ごっ…ふぅっ…」

「っ、あ〜、気持ちいー…ハメられながらおクチもちんぽでいっぱいにしちゃって、いやらしいなァお前は。くく、これぞ輪姦の醍醐味だな」


 大地は、いやらしく笑いながら頭上で呟くナブーの声が、とても遠くで聞こえるような気がした。

 ふと、何故こんなことになったのかという疑問が頭をよぎる。ほんの少し前、この夏までは、ラビルーナの自分の家でにぎやかな家族とラビに囲まれ、お母さんの美味しい手料理を食べて

いられたのに。何故…。


 そこにずっと繰り返されている呪文が重なる。『僕が悪いコでした』。

 ああそうか。僕が悪いコだからだ。

 悪いコだから、トーマスという老人に大けがを負わせ、家族を悲しませ、シャマンとナブーにお仕置きされているのだ。

 ごめんなさい。許して。ごめんなさい。


 大地の視界は涙でぼやけ、自分の身体に欲望を吐き出そうとしている2人の男の姿が見えなくなった。