スリーパーズ9
大地が白衣の男に連れてこられたのは、先程並ばせられていた中庭から少し離れた体育館のすぐ横にある建物だった。
壁の上部に『A』と書いてある。よく見ると他の建物も同様にアルファベットが書かれてあり、どうやらここはA棟と言われる建物のようだ。
A棟に入り、1階の奥にある『医務室』と書かれた部屋へ招かれる。
中には誰もいない。なぜ自分だけこんな場所に連れてこられたのだろう。
「あ、僕はここの校医のケヴィン・ステイラーだ。よろしく」
ケヴィンと名乗った男は、自己紹介しながら握手を要求する。大地は求められるままそれに応えるが、握ったケヴィンの手はじっとりと濡れていた。
そして大地の持っていた検査用の紙を見て言う。
「ヘェ〜〜〜、11歳か〜。この少年院に長年勤めてるけど、歴代最年少だね!」
何がそんなに可笑しいのか、ケヴィンは愉快そうに笑っている。
「そんな可愛い顔して、こんなとこにぶち込まれるなんて…何したの?窃盗?傷害?」
大地はそう問われても、答える気はなかった。この男の軽薄な質問の仕方も嫌だったし、ここに来ることになった呪わしい出来事を改めて口にしたくなかったのだ。
黙っている大地を見ても、その心中をケヴィンはまったく察することができない。にたりと笑って大地を見た。
「あ、もしかして…売春とか!?」
バイシュン。大地は何のことか分からなかった。だが、なぜかケヴィンはますますウキウキした様子で1人呟いている。
「最近の子は進んでるからな〜。性病とかもきっちり診とかないといけないんじゃないか?ま、後でじっくり調べるとしよう」
そして、身体検査が始まった。
ケヴィンに言われて、大地は家から着てきた衣服を脱いだ。タンクトップとブリーフだけの下着姿となる。
身長・体重などの他に、視力や聴力など一通り検査を終わらせ、触診の検査に入った。
「タンクトップは脱いで」
大地はケヴィンに言われるとおり、上半身を露わにした。ケヴィンはじっと見つめていたが、大地は気に留めなかった。
ケヴィンの前の椅子に座らされ、聴診器を当てられた。
ヒヤッと冷たいその感触に、大地はピクリと震えた。ケヴィンは先程までニヤニヤしていたのに、この検査の時は急に真顔になり、無言だった。
聴診器を持っていない左手がなぜだか大地の身体をせわしなくさすっている。聴診器は大地の胸の突起に時々ぶつかってきた。
今まで受けた学校の身体検査とは少々違う様子に大地は戸惑ったが、それがどうおかしいのか表しようがなく、そのまま耐えていた。
大地の背中も充分に堪能したケヴィンは、聴診器をカチャカチャと耳から外しながら言った。
「じゃあ、パンツ脱いで」
「…っ!」
大地はいよいよ、中庭で他の少年らが噂していた『お尻の穴に指を突っ込まれる』検査が行われる時が来たんだと身構えた。
だが、あれはあくまで噂話だ。本当かどうか分からない。その真偽のほどを大地はケヴィンに確かめることにした。
「あの…お尻の穴に指入れられるって聞いたんですけど…あれは本当ですか?」
ケヴィンはメガネの奥の小さな目を見開いて、少し面食らったような表情をした。そして少し考え込むようなしぐさを見せながら大地の質問に答えた。
「…本当だよ」
「それは…何のために?」
やはりその検査を受けなければならないと知って、大地は落ち込みながら再び問う。
「お尻の穴に何か隠してないか見るためだよ」
「え?」
――お尻に何か隠す?ケヴィンが何を言っているのか、大地は理解できなかった。
「少年院に入所する時、正規に持ち込みできないものを尻の穴に入れてくるヤツがいるんだよ。それを防ぐために、身体検査で必ずチェックしてるんだ。さあ、分かったら早く脱ぎなさい」
ケヴィンはそう言いながら正面に座る大地にぬっと近づき、強引にブリーフを下ろした。ブリーフの前面が引き下げられて、幼いペニスが一瞬覗いた。大地はそんなことを他人にされて、
恥ずかしくて顔を真っ赤にした。
「ぁっ…!」
「ふふふ…」
大地は笑うケヴィンにブリーフを再び下げられないよう、腕で防御しながら言った。
「オレ、そんなとこに…お尻の穴なんかに何も入れてません!」
言うとおり何も隠していないのに、そんな検査は受けたくない。それにこのケヴィンという校医はどうも嫌な感じがする。
「みーんなそう言うんだよ。その言葉をいちいち信じてたら、少年院は無法地帯だ。そもそもこんなところにくるヤツの言葉なんか、誰が信じるって言うんだ」
ケヴィンにそう言われて、大地は身を固くした。そうだ、自分はもう立派な『犯罪者』なのだ。
「お前は見てると売春の疑いがあるからなァ…念入りに調べてやるぞ」
ガードする腕を掴まれ、大地は医務室のベッドに強引に寝転ばされた。
「あ…」
するりとブリーフを脱がされる。恥ずかしさに困惑する大地にかまわず、ケヴィンは検査のための体勢を指示する。
「あおむけのまま脚を胸に引き寄せて…そう、抱えて。脚はもっと開くんだ」
大地は頬を真っ赤に染めた。ケヴィンに言われるままとらされた体勢は、性器もお尻も丸見えになるものだったからだ。
ケヴィンは最初の検査より、熱に浮かされたように顔を紅潮させて息遣いが荒くなっている。
「やっぱり11歳だね、ちんちんも可愛い」
そう言って大地のペニスの先端を指でつまみ、ふにふにと刺激を与える。そんなところに触れられて、大地は戸惑った。
「あっ…んっ!」
ケヴィンは大地の股間に顔を埋めそうな勢いで、アナルを凝視し始めた。
「…またここも…すごい綺麗だな」
そう言うケヴィンの声音は、興奮で震えている。
「どぅれ」
そう言って大地のアナルの両脇に両手の親指を添え、ゆっくりと左右に割り開いた。
「なっ…いやっ!」
大地の抵抗に対しケヴィンはなんの反応もしなかった。それどころかまたぶつぶつと1人呟いている。
「色もピンクでホントに綺麗だ…どうやら売春はしてないな。それどころか完全未使用じゃないか…」
ヒクヒクとひとりでに動くアナルを見てたまらなくなったケヴィンは、吸い寄せられるように中指をそこにあてがった。
「うぅんっ!」
いきなりの妙な感触に、声を上げてしまう大地。
「今から、中に何も入れてないか調べるからね…」
中指で円を描きながら、ケヴィンは吐息混じりに言う。大地は怖くなって身をひるがえし逃れようとした。
「いっ…イヤだ、イヤだぁっ!!」
するとケヴィンが激しく怒鳴った。
「これは入所する者全員が受けなければならない、ちゃんとした検査なんだ!大人しくしろっっ!!」
脚首を掴まれて強引に開脚されそうになる。
「ゃ…」
大地の心臓は早鐘を打っていた。
