殿の誕生日 20
 次の日の早朝。

 朝日が昇る前のまだ薄暗い中、殿が目を覚ました。

 眠気に包まれる中、この時間ならまだ起きていないだろう、と隣で眠る大地之助を確認する。


 大地之助はこちらを向いて、横向きで自分にすり寄るように寝ている。殿は優しく微笑んだ。

 くー、くー、と寝息を立ててぐっすり眠る大地之助を幸せな気持ちで見つめながら、殿はふと思った。

(昨日も契れなかったなぁ…)


 何日繋がっていないのだろう。

(大地之助が鑑永寺に通う前は毎日契っていたのに…かえすがえすも鑑導のヤツ…)

 殿が恨めしく思っていると、大地之助の着物が少々乱れていることに気づいた。

 子どもらしく寝相があまりよくない大地之助には、これは毎度のことだった。

 いつも通り直してやろうと手を伸ばしかけた時、肌襦袢のたわみで小さな乳首が少し覗いているのを見つけた。

「……」

 ドキリ、とした殿は、昨日抱けなかった大地之助に対し、いたずら心が芽生えた。


 襟元のたわみの隙間を利用して、そのまま桃色の突起に手を伸ばす。最初は指の腹でそぅっとくすぐってみた。

 柔らかい感触が指を通して殿をさらなる欲情へと誘う。

 くりゅん、くりゅんと円を描くように優しく愛撫を繰り返すが、大地之助は一向に起きる気配がない。

(こいつ…無防備に毎晩家臣の前で寝ついているが…これだけぐっすり人前で熟睡してしまったら、やましい気持ちのあるヤツからこんなことされても、

気づかずに最後までヤラれてしまうのではないか?)

 殿は猛烈に不安になった。


 どこまでどうしたら気づくのか調べなければ、大地之助が危ない!と、殿は思考がおかしな方向へ向いていることに気づかずに、先ほどより強めに

くりくりと桃色の突起をこすってみた。


「ぅうん…」

 大地之助は小さく呻いて寝返りを打った。

 触られていることにちゃんと気づいて反応したので、殿はホッとした。

 大地之助の顔は向こうを向いてしまったが、そのかわり身体は仰向けになった。殿が弄っていたせいで、肌襦袢の襟から覗く乳首はぷっくりと勃ちあがって

いた。


 それでもすやすやと眠っている大地之助が、可愛くもありまた恨めしくもあった。

 そのためさらにしつこく追いかけて、再び同じ乳首にいたずらを仕掛ける。今度はつまんでみたりはじいてみたり、起きている時と同じような大胆さで

大地之助の反応を窺った。


 ピク!と大きく身を震わせて、大地之助は再び殿の方に寝返りを打った。

 殿は気づかれてもいい、いやむしろ覚醒させてしまえと乳首から指を離さずにずっと弄っている。大地之助は気づいているのかいないのか、ゆっくりと

目を開いた。

 目の前でぼんやりしている大地之助に、殿は声をかけた。

「おはよう」

 だが目覚めたばかりで何の反応もない。


 殿は、いつもの敏感に反応する大地之助もいいが、寝起きの大地之助も大好きだった。

 目を覚ましたばかりの大地之助…機嫌が悪いというのではなく、覚醒するのが遅く反応の鈍い様子がただただ愛らしく、愛おしかった。

 普段は自分よりも大地之助の方が先に起きることが多かったので、こんな姿をなかなか見ることができず、その希少価値の高さも欲情を刺激する。


 大地之助は焦点の合わない目を開けたまま、殿の顔をじーっと見ていたが、またゆっくりとまぶたを閉じて眠りに入っていく。

 その様子の可愛らしさにさらに興奮しながらも、殿は先ほど遊んだ乳首に再度触れてみた。


「っ…!」

 大地之助は今度こそはっきりと目覚めた。まだぼんやりはしていたが、殿が自分の胸をまさぐっていることはしっかりと認識したようだ。

ぅ〜んっ」

 知らない間にそうされたことが嫌だったらしく、少々抗議めいた声を発しながら、大地之助は殿の胸に顔を潜り込ませた。

 自分の胸元は腕でしっかり防御している。そうすることで、殿の手から自分の胸を守れると本能的に思ったのだろう。


 だが逆にその体勢は、殿には願ったり叶ったりなものだった。

 大地之助がこちら向きに密着したことによって、胸にこそ手は出せないが、一番触りたい部分に容易に手が伸ばせるようになったからだ。


 殿はそろそろと肌襦袢の上から大地之助のお尻をまさぐりだした。

 小ぶりだが形がよくてぷりぷりとした触感が心地よい。久々の感触に殿は鼻息が荒くなる。


 一方大地之助は、寝入り始めにそうされたのでもう完全に目を覚ましてしまった。だが特別声を上げることもなく、この行為に少し困っているようだ。

 そんな大地之助をちらりと見やり、殿は大胆にも肌襦袢の裾から手を侵入させた。


「!」

 ハッとなる大地之助に構わず、その手は太ももの前側からなめらかな肌を伝って、褌に辿り着いた。

 そこに指をかけて、じわじわとほどいていく殿。大地之助は相変わらず、困惑して黙ったままだった。


 ほどかれた隙間から、柔らかな双丘の狭間に沿ってゆっくりと指を這わす。

「あっ…!」

 もう片方の手で殿にしっかり抱えられて逃げ場のない大地之助は、その場で身をえびぞらすことしかできない。

 その拍子に、殿の指がお尻の割れ目に挟まれてしまった。


「や、動けない。大地之助に捕えられてしまったなぁ」

 殿はそう言って笑いかける。

「…ゃ、やだっ」

 殿の思惑にまんまとハマッてしまったと気づいた大地之助は、指を解放するためにお尻の力をゆるめる。


 だが、自由になった指は離れるどころか大地之助の思いとはうらはらに、もっと敏感な場所へ近づこうとゆるゆると動きだした。

 大地之助は真っ赤になって殿の胸であえいだ。

「はっ…もぅ、殿っ」

「…昨日約束したのに先に寝おって…私は寂しかったぞ?」

 殿は優しい口調で少々責めながら、『ん?』と大地之助の顔を覗きこむ。


「ご…ごめんなさい」

 大地之助は素直に謝った。

「昨晩は眠ってしまったお前を起こすのが可哀想になってしまったが…」

 殿はそう言いながら寝ころんだまま大地之助をすごい力でさらって、自分の身体の上に乗せた。

「わんっ!」

 その勢いに驚いて大地之助は小さく叫ぶ。否応なく身体が密着し、二人の顔も間近に迫る。


「今朝、お前を見ているとどうにもこうにもたまらなくなってしまった」

 殿は大地之助の頭を引き寄せ口づける。

 待ち焦がれた口唇。深く深く口中へと侵入する。

 ちゅ、ちゅば…という触れ合った部分から響く音。

 それを聞きながら大地之助は殿の勃起した魔羅が太ももに触れることに気づいた。それによって大地之助の鼓動がより早まる。


 殿は自分の脚の上に、同じように大地之助の脚をぴったりと閉じて乗せつつ、隆起している自身の魔羅を大地之助の素股に潜り込ませた。

「ふっ…」

 そんなところに殿の熱い魔羅が現れ、大地之助は驚いて吐息をつく。

 殿は大地之助の太ももの裏側にそれぞれ両手をかけ、そこをぐい、と割り拡げる。そして自身の魔羅を大地之助の脚のつけ根にさらに密着させた。


 素股にすっぽりと包まれる殿の魔羅は、ぴたりと閉じられた大地之助の両脚に挟まれ、そこで熱くたけり狂っていた。

 大地之助と一つになりたいと願う想いが、その形に如実に表れていた。

「はぁ…殿…」

 大地之助は戸惑いながらも、太ももで殿自身を刺激しようとゆっくりと腰を動かし始めた。

 ただただ柔らかく心地よい場所が、自分の魔羅を揉みしだく。殿は腰がとろけそうだった。


 殿の熱い魔羅は大地之助の蟻の門渡りをなぞりながら、菊門まで届いてそこを刺激する。

 上下する動きと連動しながら、あ、あ、と大地之助は小刻みにあえいでいた。

 頬は上気しており、快楽で潤んだ瞳で自分を見下ろすその姿に、殿はさらに息が荒くなった。


 殿の陰毛の上には大地之助の勃起したおちんちんと小さな袋が乗っかっている。

 揺れるたびにふわふわとした毛の感触が絡みつき、適度な刺激を与えてくる。大地之助は耐えられなくなって、殿の胸に頬をつけて声を上げた。

「あはぁっ、とのォ…っ」

 大地之助はもう下半身に力が入らず、両足を閉じていられなかった。

 殿の上でパカッと開かられた脚。両ひざは布団の上に投げ出していた。

 そしていきり立つ大人の男根を素股で上下させて、そのカリのでこぼこを菊門にすりつけてすすり泣いていた。


 殿は胸の上の少年を左腕で抱きしめて、右手の中指をぺろりと舐める。そしておもむろに大地之助の蕾に触れた。

「っ…!!」

 大地之助は強い刺激に声が出ず、えびぞって顔を上げた。

 殿の魔羅からは先走りの液がにじみ出ており、それが付着して濡れているそこに、殿はゆっくりと中指を侵入させていく。

「あっあぁっ…
んんっ」

 大地之助の華奢な背中が腕の中で震えるのを感じながら、殿は囁いた。

「大地之助…もう挿れたいんだが…いいか?」

 久しぶりの契り。大地之助の中は狭く、そこに触れていると早く自身をうずめてしまいたくて、早急だと思いつつ尋ねてみる。

 大地之助も早く繋がりたいという想いは同じで、待ち焦がれるように、うん、とうなずいた。


 それを見てたまらなくなった殿は、大地之助を抱いたままぐるりと体勢を入れ替えた。

 たちまち逆の位置になり、殿に組み敷かれて見下ろされる。それだけで大地之助は恍惚の表情を見せた。


 大地之助の脚を大きく割り拡げ、両腕で抱え上げる。

 ビクン、ビクンと頭を揺らす魔羅が、自分のおちんちんの向こうに見えて、大地之助はその対比に強い情欲を覚えた。

 殿は何も言わず、そろそろと桃色のかわいい菊門に近づいて、ゆっくりと魔羅を挿入した。


「…ぁっ」

 久々の交わりに、大地之助は歓喜の声を小さく上げる。

 ぬぬ、ぬ…と殿が奥深くへと分け入ってくるたびに、びく、びくっ…、と身を震わせて反応した。

「大地之助…」

 ハァ、と大きく息をついて、殿は大地之助に包まれた喜びを実感する。

「とのォ…」

 大地之助は殿の腕を掴んで、上半身を引き寄せようとする。それに応じて、殿はぐっと前かがみになった。

「あくぅっ!」

 中で殿の魔羅が少し角度を変えて、大地之助の敏感な部分に触れそうになる。収縮した菊門にさらに締めつけられた殿は快楽に耐えながらも、大地之助の

顔に近づいて口づけをした。


「ふ…あ…んぅ…」

「はぁ…はぁ…」

 ちゅ、ちゅば、と音を立てながら、濃厚な接吻をしたまま殿は揺れ始めた。

「あふっ…あっ、ふぁあ!」

 重なった口唇の隙間から大地之助のあえぎ声が漏れ出る。

 七日ぶりに聞くなまめかしい声。一週間繋がれないなど、先月の出張の時以上だ。

 あの時は離ればなれになっていたため仕方がなかったが、今は違う。

 毎日会っているのに繋がれない。大地之助を心から愛している殿にとっては、耐えがたいことだった。

 かなり長い間お預けを食らっていたので、殿は大地之助の身体を貪った。

 こうやって肌を触れ合わせると、よく我慢できていたものだと自分に感心してしまう。

 大地之助は自分のものだ。後から出てきたわけの分からぬ坊主など知るものか。


「はぁっ…ひっんっ、んっ!」

 大地之助は殿に情熱的に求められて、その動きについていこうと必死だった。

 声を上げるたびに大地之助の中がきゅきゅっと殿自身を圧迫し、しばらくぶりということもあってたまらず言った。

「ぅ…っ…大地之助、もう出すぞっ…」

「あぅぅっ、僕もイク…っ!」

 殿が大地之助の中に勢いよく精を放ったと同時に、大地之助も自身の腹にぴゅるっ…と射精した。


「あ…はぁ…はぁ…」

「ん
…」

 二人は熱い吐息に包まれて、抱きしめあった。