殿の誕生日 24
 乱次はそんな大地之助を見下ろし、低い声で言った。

「どうやら一人でお留守番みてぇだな。退屈してただろう、鑑導が帰ってくるまでオレたちと遊ぼうぜ」

 帯留めをピンと指ではじかれて外される。

 すかさず背後にいた六三郎が帯の端を見つけ、ほどきだした。


「……!!!」

 大地之助が感じたイヤな予感。

 それが的中して悲鳴を上げそうになった瞬間、六三郎が背中をどん、と押した。

「あっ!!」

 乱暴に帯をほどかれる。大地之助はその拍子にくるくると回転し、なすすべなく床に転がった。


 犯される。

 数か月前と同じように、男たちの欲望の赴くまま、心と身体を踏みにじられる。


「ぃ…いやっ!!」

 大地之助は着物から襦袢を覗かせながら、なんとか拒絶の意思を口にした。

「叫び声もか〜わい〜!!」

 大地之助が今できる精一杯の抵抗ですら、男たちにとっては性的興奮をあおるものでしかない。

 わらわらとたかられて、あっという間に押し倒された。


「〜〜〜〜〜…っっ!!」

 ハァハァという荒い息遣いがさまざまなところから聞こえてくる。

 こいつらは本気だ。鑑導のように冗談などではなく、本気で自分を嬲ろうとしている。


 大地之助の脳裏に、横山たちや安井に慰み者にされた時のことが蘇った。

 まざまざと、鮮明に。

 たちまち大地之助を圧倒的な恐怖心が支配した。


「?どうしたんだこいつ?」

 ヒクヒクと薄い胸をわななかせ、瞳いっぱいに涙をためて動けなくなっている大地之助を見て、乱次は少々面食らった。

 六三郎が顎をさすりながら言った。

「完全にビビっちまってるみたいですね」

「あらら〜」

 そう言うヨタ吉は眉を八の字にして心配そうな顔をするが、嬉しそうに笑っていた。


「大人しくなってちょうどいい」

 乱次は大地之助の肌襦袢の帯に手をかける。そのまま素早く緩め、前を開いて薄い胸を晒す。

 なめらかな白い肌に、ほんのり桃色に色づく可憐な突起。男たちはみんな、ぐびりと喉を鳴らした。


「へへ…」

 小さく舌なめずりした乱次は、おもむろにその突起の片方を口に含む。

 大地之助はビクリと身を震わせ目を見開いたが、されるがままで抵抗もできなかった。

 さらに六三郎の太い指がもう片方の乳首に伸びてきて、くりくりといたずらを始めた。

「くふぅっ…」

 大地之助はくやしげに声を漏らして泣きながら、恥辱を受けることに対しての羞恥で頬が紅潮していた。

 それを見て、一人乗り気でなかった鹿蔵も、そのなまめかしさに思わず呟いた。

「…オレ、こいつならイケるかも」

「よ〜し、じゃあ全員で可愛がってやりましょうや!」

 ヨタ吉は張り切って指を鳴らした。


 涙いっぱいの瞳で虚空を見つめ、絶望に震えている顔を覗きこんで、乱次はさらに大地之助を追いつめた。

「五人全員のお相手…大変だろうが最後まで立派に務めてくれよ」

「……!!」


「イヤッホ〜〜〜!!!」

 五人の男が一斉に襲いかかる。

(またあんな目に遭うの…!?殿の誕生日なのに、イヤだ、イヤ…!!)

 そう強く思うのに、どうしても身体が動かなかった。それをいいことに、男たちの手がさまざまなところから伸びてくる。

 裏から持ち上げられた両脚は簡単に開かれ、褌も外された。

 チンピラどもは興味津々でそこを覗きこんだ。

「あらま、おちんちんも蕾ちゃんも可愛いこと!」

「ここに鑑導の魔羅が出たり入ったりしてんのか〜」

「あいつますます憎ったらしいな!」


 こいつらは鑑導と自分がそういうことをする仲だと勘違いしている。

 大地之助は違うと言いたいのに、怖ろしさで喉がきゅっと狭まり、何も言えなかった。

「咥えろ」

「っ!」

 突然、鹿蔵のいきり立った逸物を頬にあてがわれ、大地之助は焦った。

「ぃ…や…!!」

 やっとの思いで拒絶の言葉を口にできたが、それがかえって鹿蔵の苛立ちをあおってしまった。

「気取んじゃねぇ!!毎日じゅっぽじゅっぽと鑑導の魔羅を悦んで咥えてんだろうが!!」

 そのまま髪の毛を掴まれ、無理矢理魔羅に誘導される。

「〜〜〜〜〜っ!!」

 大地之助が必死に顔をそむけている時、乱次が菊門に指を伸ばした。

「っ!!」

 びくり、と自然に身体が大きく震える。乱次は小さな蕾を指の先で優しく揉みながら言った。

「中で一発出したらすぐ溢れちまうだろうな…」

「……!!」


 大地之助が一層身を強張らせたその時、叫び声が聞こえた。

「大地之助っ!!!」

 みなが一斉に部屋の入口を見た。

 そこには、三浦堂のまんじゅうを手に提げた鑑導が、真っ青な顔で立っていた。


「鑑さん…」

 大地之助は涙で濡れた顔で弱々しく呟いた。

 タチの悪い連中が、大地之助を輪姦している。

 大切に想っている大地之助が、ひどい目に遭っている。

 その姿はあまりにも不憫で痛々しく、また衝撃的で、鑑導は瞬く間に全身が激しい怒りに包まれた。


「お前ら…よくも大地之助に…!!」

 憤怒した鑑導はまんじゅうを捨て去った。そして即座に大地之助を救い出そうと向かって行った。

「うぉぉおおおおお…!!!」

 乱次は大地之助を押し倒したまま、手下たちにあごで示して合図を送る。

 唸り声を発しながら迫りくる鑑導に、ヨタ吉、多平、六三郎の三人が立ちはだかった。


「うあっ!」

「ぎゃっっ!!」

 ヨタ吉をなぎ倒し、続いて容赦なく多平の顔面をはり倒した。

 大地之助が嬲り者にされているところを目の当たりにして、鑑導の怒りはただならぬものであった。


 その迫力に圧倒された六三郎は、思わず短刀を抜いた。それを見ても鑑導は一切ひるまなかった。

「くそっ、鑑導…死ねぇ!!」

 そう叫んで短刀を逆手に持ち、六三郎は襲いかかった。


 大地之助は思わず叫んだ。

「鑑さん!!」

 鑑導は向かい来る六三郎を避けようとせず、真正面から応戦しようとしている。

 このままでは鑑導は…!

「いやっ…鑑さんっ!!!」

 大地之助は悲鳴のような叫び声を上げた。


「うお―――!!」

 六三郎が本格的に刺し貫こうとしたその時、乱次が大声で制した。

「やめろ!!」

 六三郎はハッとなり、停止した。その時、最初に倒されたヨタ吉と多平が鑑導を羽交い絞めにした。

「…っ!!」

 すぐさま六三郎も刀を持ったまま取り押さえる。

 抵抗してみるものの、がっちりとその身をうつ伏せにされて座卓に押さえつけられた。さすがの鑑導も、三人の男に捕えられたとあってはどうしようも

なかった。

 乱次は笑った。

「おいおい六三郎、殺しちまったらこいつのかわいい寺小姓がオレたちに犯されるところをお見せできなくなっちまうだろうが」

「そいつは寺小姓なんかじゃない!」

 鑑導は座卓の上で身をよじって暴れるが、乱次は鼻で笑った。

「見え透いた嘘をつくな。なら、お前のその取り乱しようはなんだ」

「本当に違うんだ、大地之助とオレとは何の関係もない!!」

「くくっ。いつも偉そうにしてるお前がそんなに焦ってんの、おンもしれーなぁ」

 さも愉快気にほくそ笑む乱次の隣で、共に大地之助を組み敷いている鹿蔵はふと気になった。

(…大地之助…どこかで聞いたことがあるような…)

 だがそれがなんだか思い出せず、鹿蔵は黙っていた。